友の会読書サークルBooks

本の紹介「環境考古学への招待」

「環境考古学への招待 発掘からわかる食・トイレ・戦争」松井章著、岩波新書、2005年1月、ISBN4-00-430930-1、740円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。

[トップページ][本の紹介][会合の記録]


【中条武司 20050901】【公開用】
●「環境考古学への招待」松井章著、岩波新書

 考古学といえば古墳から出る土器や装飾品、建造物跡などが脚光を浴びるが、これらをいくら見ていても当時の人々の生活はわからない。著者は動物考古学という専門から、動物や魚の骨のみならず、DNA解析からトイレの遺構発掘まで、過去の人々の生活を遺跡から甦らせる。博物館に展示している装飾品を見るよりも、とても活き活きした考古学である。
 しかし、新聞連載を元にしたこともあって、話の掘り下げが足らなかったり、急な展開があったりするのは仕方のないところか。

 お薦め度:★★★  対象:違った切り口の考古学を知りたい人

【魚住敏治 20050830】
●「環境考古学への招待」松井章著、岩波新書

 考古学というと、土器、古鏡の編年や遺跡の発掘、とくに形態学の立場からの調査が重視されてきました。しかし近年、筆者が本書で述べているように科学的分析を駆使して当時の人々の生活を再現しようという試みがなされています。本書は、家畜や人骨などの実例をあげ、科学的手法でいかに考古学の成果があげられているかが理解しやすく書かれています。特に第二章の『土と水から見える古代』は、こんなことまでわかるのかと驚かされます。
 ただ、科学的分析から得られた本文の描き出す生活の様子が正しいのかどうかは自分自身でもう一度考え直してください。

 お薦め度:★★★  対象:考古学に興味のある高校生以上のかた

【和田岳 20050828】
●「環境考古学への招待」松井章著、岩波新書

 遺跡から出てきた動物の骨、植物の種子、寄生虫の卵、さらに土壌の分析などから、過去の人々の生活を考えるのが環境考古学。著者は、なかでも縄文時代周辺の動物考古学が専門。縄文時代頃の食生活、トイレ、動物の家畜化の歴史などが、著者の経験に基づいて次々と紹介される。
 動物考古学の実際の作業は、動物の骨を同定したり、土壌から寄生虫卵を洗い出したり。していることは生物学や古生物学にきわめて近い。ブタなどの家畜化の話などは、生物学的にもとても興味深い。
 話自体は興味深いものが多いが、次から次への脈絡なく話題が移っていく感が強い。また、薄い根拠から大胆な推測をしている感も強い。帯に「考古学は推理小説よりスリリング」とあるが、たしかに推理小説に似ている。

 お薦め度:★★  対象:過去の人と動物の関わりに興味のある人、あるいは名探偵を目指している人

[トップページ][本の紹介][会合の記録]