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本の紹介「カニムシ」

「カニムシ 森・海岸・本棚にひそむ未知の虫」佐藤英文著、築地書館、2021年12月、ISBN978-4-8067-1628-0、2400円+税


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【和田岳 20220225】【公開用】
●「カニムシ」佐藤英文著、築地書館

 カニムシ研究して40有余年の著者によるカニムシ紹介本。
 出だしは、カニムシの認知度は一般に低いけど、見せるとけっこう受けが良いといった軽い話ではじまる。が、いきなり難しい形態・分類の話に突入。分類形質が云々とか言い出す。ここは読み飛ばそう! 少し我慢すれば、カニムシの基本的な生態が紹介される。ここが一番面白い。カニムシの別名は、アトビサリ。毒や糸を出してクモみたい。移動力がないので、昆虫やネズミなど、他の動物に便乗して移動。精包を受け渡しての体内受精をするけど、オスは柱の上に精包のせて放置、それをメスが見つけるとか。楽しいネタが満載。毒のないカニムシは、獲物をとったら振り回して静かにしてから食べるらしい。ハサミが汚れるのをとても嫌うカニムシは、クモを襲っても糸がからんだら、捕食忘れてハサミの掃除を始めるらしい。可愛い。

 お薦め度:★★★  対象:カニムシに少しひかれる人
【西村寿雄 20220221】
●「カニムシ」佐藤英文著、築地書館

 体長が2mmほどの土壌動物カニムシ、両手をカニの様に広げた姿形は初めて見た人は興味がそそられる。意外と近くの湿地や樹林地帯、海岸にいる。この本は、そのカニムシを40年ほど前から研究していた佐藤英文さんの研究史が書かれている。佐藤さんがカニムシ研究に至った道やカニムシの生態などくわしく書かれている。最後にカニムシの見つけ方や採集方法などが書かれているので、これからカニムシを研究しようとしている人には参考になる。

 お薦め度:★★★  対象:これから生物研究をしようとしている人、カニムシに興味ある大人
【西本由佳 20220220】
●「カニムシ」佐藤英文著、築地書館

 カニムシとは、サソリのようなハサミを持った小さな生きもので、体長1〜2oくらいのものが多い。昆虫ではない。土壌や樹皮、本の中などにひそむようにして暮らしているという。著者は仕事のかたわら、時間を見つけては森や海岸に通い、採集をする。探し始めは見つからず、次第にコツをつかんでいき、ツルグレン装置を自作し、家の中で飼育に適した場所を探す。カニムシは調べている人が少なく、どう研究していくかも手探り。標高や植生の違う森を探して生活史を解明していくのはとても地道で、でもやりがいのある調査だったようだ。知りたい、調べたいという気持ちがあれば、自然のしくみを解明する一端にふれることができる。

 お薦め度:★★★  対象:日々仕事に埋もれているサラリーマンに
【萩野哲 20220213】
●「カニムシ」佐藤英文著、築地書館

 カニムシという名を知っているか? 著者の調査では、カニムシの認知度はわずか1%であった。分類上はクモガタ綱だが、クモ目と違って腹部に体節があるし、糸も鋏角の先端から出す。何よりも一番の特徴は、先端がハサミになった1対の大きな触肢があることで足が5対に見え、これがカニムシという名前の由来になっているようだ。カニムシはどこに住んでいるのか? 森林、海岸、樹上、他の動物の巣や体、書物(英名book scorpion!)など。一方、絶対に住めないのが徹底的に外部と内部を遮断し、ヒトの生活への邪魔者を排除する現代都市環境。本書を通読して、カニムシの謎はまだまだ解明されていないことがよく分かる。研究者は少ないし、ツルグレン装置にかからない営巣期もあるので、調査も一筋縄ではいかないようだ。それでも著者は喜び楽しんでカニムシを研究している。あまり役に立ちそうにない生物を調べている人になぜそれを対象にしているのか聞いたとき、「無用の用」、「博物学の楽しさ」云々と答えが返ってきた場合はまず間違いがないと思う。

 お薦め度:★★★  対象:「無用の用」に賛同する人
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