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本の紹介「海岸とつきあう」

「海岸とつきあう」小池一之著、岩波書店、1997年8月、ISBN4-00-006605-6、1400円+税


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【中条武司 20041022】
●「海岸とつきあう」小池一之著、岩波書店

 波の打ち寄せる砂浜は言わずもがな自然にできたものである。しかし日本では、自然にできたはずの砂浜に行くと、テトラポットや護岸など人工物を必ず見ることができる。これらの海岸に見られる無味乾燥な人工物は、人間の活動によって失われていく砂浜を、莫大な費用をかけて保護していくという矛盾を象徴している。
 本書では、防災・製塩・船運・ダム建設など様々な人間活動によって日本の海岸線がどのように変化したか、特に浸食問題を中心に語られている。海岸線の変化が一元的に起こった訳ではなく、様々な要因が重なって起こったことだということがよくわかる。しかし、著者の述べる積極的な養浜で海岸線を維持していくのは、やはり人間活動の矛盾を象徴しているようで私自身はまったく納得できない。

 お薦め度:★★  対象:日本の海岸線の現状を知りたい人に

【和田岳 20040922】
●「海岸とつきあう」小池一之著、岩波書店

 自然環境とのつきあい方シリーズの1冊。著者は地理学が専門。干潟、海岸砂丘、河口、砂浜といった海岸地形とその人為的改変の歴史と現状が語られ、最後に“自然な海岸”を取り戻す取り組みが紹介されます。
 近代における急激な海岸の改変、とくに自然海岸の減少を憂うのはわかりますが、生物の多様性保全といった視点が欠けているのが難点。生物好きが読めば、各所で違和感を感じるでしょう。そもそも“自然な海岸”の目指すところが違っているようです。

 お薦め度:★★  対象:地理学において人と海岸との関係がどう考えられているかを知りたい人

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