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本の紹介「ジュラシック水族館へようこそ」
「ジュラシック水族館へようこそ 日本の化石からわかる海の古代生物」中島保寿著、化学同人、2025年5月、ISBN978-4-7598-2177-2、1900円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
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【和田岳 20250822】【公開用】
●「ジュラシック水族館へようこそ」中島保寿著、化学同人
中生代の海棲爬虫類の研究者である著者が、古代生物水族館構想を語る。という趣向。水族館をつくるには、古代生物を復活させるだけでは不充分。なにを食べていたか、どのよう環境に生息していたかなど、生きざまを復元する必要がある。とても惹かれる。
でも、その後は著者の研究者としての歴史が語られる。化石との出会い、初めての野外調査、魚竜研究、魚竜のうんこ化石の話。偶然であった両生類化石、海の恐竜スピノサウルス。最後は、野外での化石発掘したい人に向けた準備や道具などノウハウと、古生物学者になりたい人への助言。古代生物水族館はどこに行ったんだろう?
お薦め度:★★★ 対象:古生物の研究者になりたい人、日本産の魚竜やスピノサウルスに興味のある人
【西村寿雄 20250816】
●「ジュラシック水族館へようこそ」中島保寿著、化学同人
タイトルがちょっと紛らわしい。各地の海の古生物博物館紹介というよりは、著者の古生物化石探索人生の経緯を語っている。著者は長年古生物化石を全国各地を探ってきた専門家。この本では著者の古生物化石発掘のノウハウが具体的に書かれている。今は化石採集は個人ではなかなか難しい時代になった。発掘したいときはこの本の後半に書かれている各地の古生物関連博物館の行事に参加するのが手っ取り早い。小学生にもこの本を期待されているようだが小学生には無理。かなり専門的な話も出てくるので古生物関連の化石採集に興味のある学生か化石愛好家向き。
お薦め度:★★★ 対象:古生物化石発掘を目指す学生
【萩野哲 20250816】
●「ジュラシック水族館へようこそ」中島保寿著、化学同人
古生物学者である著者は、化石研究から復元した古代の水生生物を集めた水族館を妄想した。中生代は陸上に住んでいた爬虫類たちが本格的に海に進出した時期である。化石からその生物の生前の生態がある程度推測できる。学部生の時に化石採集の技術を積んだ著者は、修士課程で魚竜類を研究した。南三陸は進化過程を示す魚竜類の宝庫であった。魚竜の骨は海綿状で、この形質から水生で比較的活発に泳いでいたことが推測できる。恐竜類は通常陸生だが、日本でも化石が見つかっているスピノサウルス類は最近かなりの生活域が水中であるらしいことがわかってきた。彼らは陸・淡水・汽水・海水が混在する多様なエコトーンの頂点に君臨していたらしい。ここでグラビアを見てみよう!古代水族館は建設中である。
お薦め度:★★★ 対象:古生物学者になりたい人(古生物学者への道、ヒント満載!)
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