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本の紹介「地震予知の科学」

「地震予知の科学」日本地震学会地震予知検討委員会編、東京大学出版会、2007年5月、ISBN978-4-13-063706-0、2000円+税


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【中条武司 20080625】【公開用】
●「地震予知の科学」日本地震学会地震予知検討委員会編、東京大学出版会

 地震予知と聞けば、できればいいけどどうせできないのでしょ、と多くの人は冷ややかに見てしまうでしょう。しかし、実は地震予知はすぐできるところに来ているのですよ。例えば津波予報。何気なく聞いていることが多いけど、あれは地震観測網が発達しているからこそなしえる技。まだまだ問題も多いけど、一昨年から始まった緊急地震速報もしかり。兵庫県南部地震以降、急速に整備が進んだ地震観測網のおかげで、(特にプレート境界型の)地震の仕組みや予兆が捉えられるようになりました。そしてそれが、確実に地震防災につながってくれることを実感させてくれます。「はじめに」の最後にある「今、われわれは意外とすごいことを知っているんですよ、皆さん」という1文が、著者らの実績に対する自信のように感じられます。

 お薦め度:★★★★  対象:地震大国日本に住む高校生以上

【萩野哲 20080425】
●「地震予知の科学」日本地震学会地震予知検討委員会編、東京大学出版会

 日本では毎年結構大きな地震がある。また、東海地震が近い将来起こるとも言われているが、素人目には地震予知は天気予報などと比べて、まだまだ実用化には程遠い感がある。しかし、この本を読むと、最近の地震研究には目覚しい進歩があり、あと1歩でより正確な予知が可能になるところまで来ているらしい。プレート境界で発生する地震は、プレート間の固着がはずれる時の跳ね上がりで起こるが、その固着の強さが一様ではなく、急激に滑って地震時に強く地震波を出す領域をアスペリティと呼ぶ。過去の地震をこの理論で検証することで、より精緻な地震予測につながるそうである、云々。それにしても本書には用語の定義に費やす紙面が多く、くどい印象があり、それは地震予知の理解を求める著者らの熱意の表れなのであろうが、それを我慢して読み進まねばならない。

 お薦め度:★★★  対象:地震の被害を受けるであろう全ての日本人

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