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本の紹介「イワナの謎を追う」

「イワナの謎を追う」石城謙吉著、岩波新書、1984年7月、ISBN978-4-00-420272-1、700円+税


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【萩野哲 20150624】【公開用】
●「イワナの謎を追う」石城謙吉著、岩波新書

 イワナという魚族は北半球の北部一円にわたって生息し、アラスカ沿岸ではサケ・マスの稚魚や北極海ではタラの稚魚を食い荒らす海のギャングともいわれている。
 根釧原野を流れる河川で白点型のイワナ(アメマス)と赤点型のイワナ(オショロコマ)を採集した著者がその生息域や生活環から、これまでの分類の不確かさに一つの答えを導くまでの悪戦苦闘の日々の記録である。オショロコマは淡水域に留まる陸封型、アメマスは淡水や湖沼や海を行き来する航海型。同じイワナでも体の大きさも違う。彼らの生息域をつぶさに検証して、一つの答えにたどり着く。北海道は近縁の二つのイワナ同士の種間競争の舞台であった!のだ。オショロコマは冷涼な気候と急峻な地形に最後の砦を見いだした祖先型のいき残りだったのだ。

 お薦め度:★★★★  対象:小さな疑問から大きな成果に導かれる道筋を覗いてみたい人に

【森住奈穂 20150625】
●「イワナの謎を追う」石城謙吉著、岩波新書

 渓流の魚イワナは、本州では河川の最上流部に生息しているが、北海道東部根釧原野では、下流域まで広い範囲にわたってヤマメやウグイと混生している。さらには海にまでまたがって暮らすイワナもいる。北半球北部一円にわたる広大な分布域に、形態の異なる種が多いイワナ属の分類は、それらが独立種なのか、種内変異であるのか、長い間論争が絶えなかった。趣味の釣りを通して北海道に二型のイワナが暮らすことに気づいた著者は、教師の職を辞して山野に彼らを追い、その分布や生活史を次々と明らかにしていく。はたしてその実像やいかに。昭和30年代の、厳しくものどかな道東の原野風景の描写(著者のスケッチも)が興を添える。

 お薦め度:★★★★  対象:謎を追って生きるひと

【六車恭子 20150417】
●「イワナの謎を追う」石城謙吉著、岩波新書

 イワナという魚族は北半球の北部一円にわたって生息し、アラスカ沿岸ではサケ・マスの稚魚や北極海ではタラの稚魚を食い荒らす海のギャングともいわれている。
 根釧原野を流れる河川で白点型のイワナ(アメマス)と赤点型のイワナ(オショロコマ)を採集した著者がその生息域や生活環から、これまでの分類の不確かさに一つの答えを導くまでの悪戦苦闘の日々の記録である。オショロコマは淡水域に留まる陸封型、アメマスは淡水や湖沼や海を行き来する航海型。同じイワナでも体の大きさも違う。彼らの生息域をつぶさに検証して、一つの答えにたどり着く。北海道は近縁の二つのイワナ同士の種間競争の舞台であった!のだ。オショロコマは冷涼な気候と急峻な地形に最後の砦を見いだした祖先型のいき残りだったのだ。

 お薦め度:★★★★  対象:小さな疑問から大きな成果に導かれる道筋を覗いてみたい人に
【和田岳 20150626】
●「イワナの謎を追う」石城謙吉著、岩波新書

 

海道の道東の小さな高校で教師をしていた著者が、釣りにはまり、近所の川で釣れるイワナに、赤い斑点のと白い斑点のがいるなぁ。から始まって、両者の分布を調べ、どんな環境と結びついているかを考察。それぞれの成長段階を追いかけ、形態の違いを明らかにし。さらに降海型との関係を明らかにし、両者が別種であると結論。そこからは両者の種間関係。食性の違い、一緒にいる時の優劣関係、それを北海道での分布の話に結びつけ。最後には地史的な時間の中で、両者の歴史を考察する。
 身近なところから書き起こし、自分の観察内容から、謎を解明していくプロセスを語る。あいまに代表的な生態学の理論の紹介まで挟み込む。構成も語り口もとても上手。今回、学生時代に読んだ本を、再び読んだ。書かれて30年以上経つのに、今読んでも充分に面白いし、科学的な内容も意味を失っていない。名著だと思う。

 お薦め度:★★★★  対象:生き物の調査に興味のある人、身近な生き物の暮らしが気になる人にも


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