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本の紹介「遺体科学の挑戦」

「遺体科学の挑戦」遠藤秀紀著、東京大学出版会、2006年9月、ISBN4-13-063328-7、2900円+税


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【加納康嗣 20061219】
●「遺体科学の挑戦」遠藤秀紀著、東京大学出版会

 熱烈に遺体科学の進軍ラッパを吹き鳴らして、情熱あふれる怪文章が踊っている。とにかく面白い。骨のこと臓器のことが臨場感を持って語られる。まるで解剖の現場に立たされているような触覚を覚える。テンポの良い語り口と解説。快い明るく活動的な文章が続く。骨のこと、臓器のことをこれほどわかりやすく書かれた本に今まで出会ったことがない。上2冊の新書版で、骨の写真に混じって自らの肢体を11回登場させている。人物像でも本当にわかりやすい著者である。パンダ・レッサーパンダ・モグラ・ツチブタの手、忠犬ハチ公、ゾウの腎臓、ガンジスカワイルカの「気管の気管支」、バイカルアザラシの目玉などなど、謎解きに近いおもしろみがあった。本来大切にすべき死体(遺体)を現在の解剖学など既存の生物学や先端生物学は臭いものとして捨て去ってしまっている。個々の遺体の収集に目的を定めない、何でも集める、それがナチュラルヒストリーなのだ。遺体科学は遺体が秘める謎を解き明かすただそれだけの単純な学問だ。著者の熱い言葉は、博物館関係者には自明のことではあろうが、しかしこれほど執拗に、これでもかこれでもかと語る著者にエールを送りたい。

 お薦め度:★★★★★  対象:遺体の不思議を知りたい人。「遺体科学の挑戦」は文章が少し硬いので大人の方。

【高田みちよ 20070220】
●「遺体科学の挑戦」遠藤秀紀著、東京大学出版会

 動物遺体を標本化することの重要性を熱く語ったもので、終始その重要性を説いている。著者は現在の標本を軽視する風潮を憂いでおり、何かに使うためではなく、将来誰かが使うかもしれない、という「無目的」のために遺体を収集する。しかし、最初から最後までその話題のみに終始するのはあまりにもくどい。もっとすっきりと書けば1/3のページ数で足りるのでは、と思ってしまう。本書で面白いのは後半のパンダとツパイの話題。途中で読むのが嫌になった方にも、この部分だけはお勧め。

 お薦め度:★  対象:教育機関に勤務する人、学芸員の卵には読んで欲しい

【長井裕司 20070219】
●「遺体科学の挑戦」遠藤秀紀著、東京大学出版会

 遺体科学への熱い思いは伝わる。その反面文章は繰り返しが多く、表現も硬いので正直読みづらい。読んだのは1冊にまとまった単行本で、写真は一枚も無く想像力にも限界があった。先日「なにわホネホネ団」に無事入団できたので、読もうと思ったが知識不足を痛感した。紹介文は先輩方にお任せし、今回は頑張って読破したと言うことで。

 お薦め度:★★★  対象:遺体に興味のある人に

【和田岳 20070220】
●「遺体科学の挑戦」遠藤秀紀著、東京大学出版会

 「パンダの死体はよみがえる」「解剖男」に続く、動物の遺体本第3弾。この3冊は同工異曲。いずれも、動物の死体は単なるゴミではなく、知識の宝庫であり、標本として保存するに値するんだ、ということを主張していると言っていいだろう。その主張は、ホネホネ団的に完全に同意できる。が、いかんせん文体が気に入らない。使命感をもって邁進していく自分に酔っているような文章はいい加減にしてほしい。唯一の進歩は、今回自分が写っている写真を載せなかったことくらいか。

 お薦め度:★  対象:文体がまーったく気にならない人で、かつ「パンダの死体はよみがえる」又は「解剖男」を読んでいない人

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