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本の紹介「市長、お覚悟召されい!」

「新装版 一夫一妻の神話 鳥の結婚社会学」上田恵介著、エッチエスケー、2004年8月、ISBN4-902424-01-0、1800円+税


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【六車恭子 20070427】
●「新装版 一夫一妻の神話」上田恵介著、エッチエスケー

 鳥たちの社会システムのありようを家族関係、配偶関係からその内実に迫ろうとする野心作である。オスメスペアーで子育てに励む姿から固い絆で結ばれた一夫一妻の神話が定着していた鳥たちの社会も人間社会顔負けのドラマの宝庫であることが次々と語られていく。法の名の下に厳罰が下る人間社会と違うのは自然選択を受ける単位が基本的にはその個体であるという非情さを見せつけられることだろうか。
 アマサギは受精可能期にメスの浮気を防ごうとライバルから守りぬくのは配偶者そのものというよりオス自身の父性であるという真実。セグロヒタキが違う場所に複なわばりを持つのはなぜか?結婚詐欺にあうメスはなぜ既婚オスを見破る能力を進化させなかったのか、オリアンズの一夫多妻の閾値モデルからメスが良い巣場所を選ぼうとする行動の必然的結果として一夫多妻が生まれる背景ともなったであろうことがうかがえる。鳥社会をのぞきながらふと人間社会と錯綜させてしまう。主に外国の文献からの紹介が多数を占めるが、日本の鳥社会のシステムの実情の報告も待たれる。

 お薦め度:★★★★  対象:恋に悩んでいる人、そうでない人

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