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本の紹介「最新研究で迫る 生き物の生態図鑑」
「最新研究で迫る 生き物の生態図鑑」きのしたちひろ著、エクスナレッジ、2025年5月、ISBN978-4-7678-3425-2、2200円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
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【萩野哲 20250816】【公開用】
●「最新研究で迫る 生き物の生態図鑑」きのしたちひろ著、エクスナレッジ
最新生物学ニュースの時間です。生物学の世界はわからないことだらけ。それを研究している研究者たちの論文を基にした31の話題をイラストでわかりやすく解説したのが本書。みんな凄い内容なので、全部ここで紹介できないのが残念。
コノハミドリガイやクロミドリガイは頭と体を切り離し、頭から心臓を含む“全身を再生”する稀有の存在。これはプラナリアの“分裂”とは異なる。なぜ切り離すのかは不明。嚢舌類42種、ヒラムシ2種のみから知られている、藻類からの盗葉緑体現象も凄い。食べることでも光合成でも栄養を摂ることができるのだ。キンメモドキもルシフェリンのみならずルシフェラーゼもウミホタルから盗み、そして発光する。なぜ食べたものが低分子まで分解されずにそのまま利用できるのか、とても不思議。トキソプラズマに寄生されたハイエナは“命知らず”になり、ライオンに近づきすぎて殺られる確率が増える。まるでネズミとイエネコの関係だ。これは自分たちを増やすトキソプラズマの作戦か?寄生虫のワザから目が離せない。ジンゴロウヤドカリの住み家の貝殻を増築しているヒメキンカライソギンチャクの発見も特筆すべきである。
お薦め度:★★★ 対象:生き物大好きで彼らのことをもっと知りたい人
【ケンタロウ 20250822】
●「最新研究で迫る 生き物の生態図鑑」きのしたちひろ著、エクスナレッジ
海洋動物の行動生態学や潜水生理学を専門にし、現在はイラストレーターとして活動している筆者が、いろいろな生き物の生態をイラストでわかりやすく紹介されている。研究者たちが発表した専門的な論文をもとに、生き物の紹介→その生き物にまつわる疑問→その疑問を明らかにするための実験→その実験からわかったこと→まとめの順に構成されている。また、一つのトピックが4ページくらいにまとめられていて、専門的な内容を一般の人にでもわかるように書かれている。また、漢字にはすべて振り仮名がふられている。
お薦め度:★★★ 対象:生物の専門知識を持っていないけれど、生き物の生態に興味がある人
【犬伏麻美子 20251024】
●「最新研究で迫る 生き物の生態図鑑」きのしたちひろ著、エクスナレッジ
ウミガメなどの海洋動物の行動生態学、潜水生理学が専門の著者が、2023年からイラストレータとして活動。本書は生態学の興味深い研究内容を、それぞれの分野の研究者たちが発表した専門的な論文をもとに、すべてイラストで分かりやすく解説され、最先端の各種生物の生態研究の中でも、特に興味深く親しみやすい内容を、その分野の研究者と話をしたり取材に行ったりと研究の苦労とともに5章で紹介されている。ページをめくると、まず生き物の紹介、さらにその生き物の特徴をより詳しく解説、そしてその生き物の明らかになっていない疑問を紹介、それからその疑問を明らかにするために研究者が行った実験・観察・調査を解説、そしてそれからわかったこと、それからまだまだ明らかになっていない疑問を解説。というように導いてくれます。ところどころにあるコラムも勉強になる。最後に章ごとに参考文献も取り上げられ、おすすめ書籍も紹介。筆者の思いが伝わってきます。ぜひ、読んでみましょう。
お薦め度:★★★★ 対象:生き物について正しい情報を知りたい人
【冨永則子 20251023】
●「最新研究で迫る 生き物の生態図鑑」きのしたちひろ著、エクスナレッジ
今は様々な媒体で、かわいい・かっこいい・ちょっとヘンで面白い生き物の様子が簡単に見られる。それが生き物に興味を持つきっかけになるのは良いことだが、そのままで終わってしまうのはもったいない。本著は生き物の生態について、研究者の最新の研究論文から、できるだけ深く、分かりやすく解説してある。著者の“きのしたちひろ”さんは、元々、ウミガメなどの海の生き物の研究者で、2023年に『生きもの「なんで?」行動ノート』を出版し、その後、イラストレーターとして活動している。生き物のイラストは擬人化されたりデフォルメされているが正確さは保たれているし、見ていて親しみがあり楽しい。本著は総ルビになっていて、前著のジュニア版ともいえる。昨今、子どもたちの間では、生き物の生態や行動を人間の視点だけから捉えて『ざんねんな…』などと紹介する本が流行っているが、できれば専門家の調査研究に基づいたものを知ってほしい。参考文献には日本語で読める一般書の紹介もあり、BOOKSで取り上げた本もある。
お薦め度:★★★★ 対象:生き物の生態に興味のあるすべての人に
【和田岳 20251024】
●「最新研究で迫る 生き物の生態図鑑」きのしたちひろ著、エクスナレッジ
基本4ページで1研究、国内外31の研究が紹介される。紹介されるのは、分野は生態学、行動学、生理学と幅広いが、野外観察や室内実験で解き明かされる動物を対象にした研究。巻末に元論文のリストがあり、関連した本のタイトルも紹介されているので、自分でさらに勉強することも可能。
驚くべきは、イラストだけでなく、大部分の文字も著者の手書きになっていること(それともこんなフォント?)。最初の2ページで、背景説明と問題設定をして、次の2ページで観察結果や研究成果が紹介される。それもイラストで。イラスト使った図表みたいなのはあるけど、数字は出てこない。
ヤシオウムの楽器を使った演奏は全然知らなかった。キガシラシトドにペア以外の友だちがいるというのも知らなかったし驚いた。ミツオシエは有名だけど、その詳しい共同作業は知らなかった。とにかく、いろんな最新知見にふれられて、とても勉強になる一冊。
お薦め度:★★★ 対象:動物の行動学や生態学に興味のある人
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