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本の紹介「家は生態系」

「家は生態系 あなたは20万種の生き物と暮らしている」ロブ・ダン著、白揚社、2021年2月、ISBN978-4-8269-223-6、2700円+税


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【森住奈穂 20210826】【公開用】
●「家は生態系」ロブ・ダン著、白揚社

 生態系という言葉は、緑豊かな大自然を想像させるかも知れない。いやいやちょっと待って。身近なものほど意識に上らないもの、ということが本書を読めばよく解る。家の中には大小さまざま20万種もの生きものが暮らしているのだ。そこには人間にとっていい奴も悪い奴もいて、その種類が多いほど、つまり生存競争にさらされていればいるほど、悪い奴は蔓延りにくくなる。国際宇宙ステーションにもいろんな菌がいて、特有のニオイを醸し出しているそうな。また、手に住む菌が料理の味を作っているという話題も興味深い。パン職人の手は洗っても洗ってもパンの匂いがするはずで、母の味とはつまりそういうことなんだなぁ。著者は一般人を巻き込んで、その土地ならではの生態系の調査を世界規模で行っている。調べたいことが次から次へと湧いてきて、とても楽しそうだ。

 お薦め度:★★★★  対象:消毒すれば安心と思っているひと
【萩野哲 20211215】
●「家は生態系」ロブ・ダン著、白揚社

 ライフスタイルが変化し、ヒトが屋内で過ごす時間は増えてきた。家の中にも様々な生物が生息していることを発見したのはレーウェンフックの功績らしい。それら生物の中には病気を引き起こすものもいることがわかり、一般大衆は家の中の生き物は殺すべき相手だと考えた。しかしそれは誤りで、多くのものは無害であったばかりでなく、有益ですらあったのだ。シャワーヘッドに生息する微生物、カマドウマ、ゴキブリ、ネコ。これらの中に「こいつら何の役に立つんや?」と思う生物がいたなら、あなたは本書を読まねばならない。私たちの体や家に棲んでいる20万種の生物は私たちの暮らし方を物語っている。生物多様性に根差した生活の研究はレーウェンフックの時代と変わらず、緒についたばかりである。

 お薦め度:★★★  対象:ホモ・インドアラス
【六車恭子 20220826】
●「家は生態系」ロブ・ダン著、白揚社

 「私のラボは共通課題で結ばれた頭脳集団である。素晴らしい新発見をしょうと公衆を参加させようとひたむきに取り組む集団」と宣言している。
 家の中の生物種は20万種をこえ発見されている。それは地球に生息している鳥類、哺乳類の種の数よりも多い細菌種が家の中からみつかっている。生き物がわんさかいて多様性に富んでいる家屋にすんでいる生物種の多くは人間の役にたっており、場合によっては人間に不可欠な存在だとする。殺虫剤や殺菌薬の過度の使用がむしろ私たちの健康を損ねる一因ともなる。
 この研究の端初は1676年レルフトのある一日に端をはっする。レ一ウェンフックが胡椒水の中にうごめく小さな生き物を顕微鏡に見いだしたのだ。家の中にいる生き物たちは私たち人間の秘密、選択、そして未来について語る!後に1897年デルフトでウイルスの発見へと繋がる!チャンスは心の準備ができているもののところにやってくる。
 屋内環境研究は給湯器から始めた。高温度下で生息できる生き物が果たしているのか?それは驚くほどの成果があった。
 この研究の成果は私たちと暮らす生き物の多様性ばかりでなく、各地に散らばる研究者の多様性をも浮き彫りにする!
 生態系が多用であればあるほど侵入しようとする生物種が「叩き出される」確率が高まる。ここが「地球の生命維持装置」の中核をなす!所以だろうか!

 お薦め度:★★★★  対象:日々の暮らし方を改めたい方
【和田岳 20221222】
●「家は生態系」ロブ・ダン著、白揚社

 家の中には、我々の想像以上にさまざまな種類の生き物が暮らし、独特な生態系をつくり上げている。ほとんどの研究者すら見逃していた家という未知の生態系のフロンティアを探求するストーリー。
 裏庭のアリの市民調査をきっかけに、身近な生物相に興味をもった著者たちは、家屋内の細菌相の調査に乗り出す。そして、40世帯から8000種近い細菌が見つかるという驚きの結果。さらにシャワーヘッドの生物相調査、宇宙ステーションISSや家屋内の真菌類調査、家屋内の節足動物の調査。壁紙や壁材など建築材で暮らす真菌類の結果は気になるし、北アメリカの屋内にカマドウマがそんなに多いとは驚いた。かといって、殺虫剤を使うと、あっという間に生まれてくる耐性ゴキブリの話は恐ろしい。
 こうした家屋内の生き物は、多くの常識と違って有害ではなく、むしろ有用でさえあることが強調される。多様な細菌相が存在すると、慢性炎症を伴う疾病が少なくなるらしい。 無害な黄色ブドウ球菌の存在は、有害な黄色ブドウ球菌の感染を防ぐ。屋内のカマドウマやカツオブシムシからは、リグニンを分解する細菌が見つかったりする。
 とにかく身近にこんなに未知の世界が広がっているのには驚かされる。自分の身の回りを改めて見回してしまうし、家の中の生き物たちとどう付き合っていくかを、嫌が応にも考えさせられる。

 お薦め度:★★★★  対象:生物多様性に興味のある人、あるいは防虫・殺菌が大好きな人
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