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本の紹介「ひとかけらの化石に宇宙をみる」

「ひとかけらの化石に宇宙をみる」箕浦孝治著、岩波書店、1999年1月、ISBN978-4-00-006665-5、1900円+税


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【中条武司 20120823】【公開用】
●「ひとかけらの化石に宇宙をみる」箕浦孝治著、岩波書店

 津波の堆積物の中にサザエの化石が含まれているそうだ。水深数〜数十mの海底から打ち上げられたサザエは何を思って砂の中に埋もれているのだろうか。というサザエを語り手に、地球史と生命進化の関わりを述べている。隕石衝突や津波が生命の進化に大きく関わっているかもしれないこと、宇宙のリズムがサザエの殻に刻まれていること、などなどが格調高い(暑苦しい?)文章で語られる。
 10年以上前の本なので、内容がやや古い部分もあるが(スノーボールアース仮説以前なので、それに基づいた地球史が述べられていない)、それを抜きにしても地球の環境変遷と生命の進化の関係がよくわかる。

 お薦め度:★★★  対象:高校生以上、地球の歴史に興味ある人

【西村寿雄 20120824】
●「ひとかけらの化石に宇宙をみる」箕浦孝治著、岩波書店

 箕浦孝治さんは、津波堆積物の研究から近々東北地方に巨大津波の来ることを学会や自治体に予告し警告していた人である。この本(1999年刊)出版のあとも警告を発し続けていたが、十分に理解されるところまで行かないうちに現実の地震と大津波が到来した。 
 この本の主題は、津波堆積物に含まれているさざえの化石から、さまざまな地球環境の情報を読み解く話である。さざえの殻に刻まれている縞々が、海中の酸素濃度や温度、塩分の濃淡などを克明に記録し現在まで進化を続けてきたという。
 「化石を研究対象とする古生物学は、標本収集に固執する前時代的な学問ではない。それどころか、われわれ人類にとって最も必要とされる情報が、最先端の手法により化石から導き出されている」と結んでいる。まさに、化石から宇宙を見る壮大な科学である。

 お薦め度:★★★★  対象:中高生以上、津波堆積物と化石に興味のある人

【西村寿雄 20111222】
●「ひとかけらの化石に宇宙をみる」箕浦孝治著、岩波書店

 箕浦孝治さんは、今回の東北地震の前に東北地方に巨大津波の来ることを予告し警告していた人である。その根拠に、箕浦さんの津波堆積物研究があった。この本出版のあとも津波堆積物の研究を続け、いわゆる貞観地震時の巨大津波の痕跡をつきとめた。以後、学会や自治体に警告を発し続けていたが、十分に理解されるところまで行かないうちに現実の津波が到来した。 
 この本は、津波堆積物に含まれているさざえの化石から、さまざまな地球環境の情報を読み解く話に多くのページがさかれている。さざえの殻に刻まれている縞々が、海中の酸素濃度や温度、塩分の濃淡などを克明に記録し現在まで進化を続けてきたという。
 「化石を研究対象とする古生物学は、標本収集に固執する前時代的な学問ではない。それどころか、われわれ人類にとって最も必要とされる情報が、最先端の手法により化石から導き出されている」と結んでいる。まさに、化石から宇宙を見る壮大な科学である。

 お薦め度:★★★★  対象:津波堆積物と化石に興味のある人、地球史に興味のある人

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