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本の紹介「皮膚はすごい」

「皮膚はすごい 生き物たちの驚くべき進化」傳田光洋著、岩波科学ライブラリー、2019年6月、ISBN978-4-00-029685-4、1200円+税

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【森住奈穂 20190829】【公開用】
●「皮膚はすごい」傳田光洋著、岩波科学ライブラリー

 皮膚には五感があるという。表皮(ケラチノサイト)が刺激を感知し、その情報が神経に伝わるのだそうだ。脳と同じ情報処理能力もあるんじゃないかとのこと。私個人の皮膚感覚では、触覚○、視覚△、聴覚△、嗅覚△、味覚△、…けっこう感じられる気がする。著者の考察では、私たちの祖先は体毛をなくし、表皮を環境にさらすことで危険をいち早く感知し逃げることができた。そして表皮からもたらされる膨大な情報を処理するために大きな脳が必要になった、とのこと。はじめに表皮ありけり。著者の研究対象である人間の皮膚について書かれた9章10章は面白いのだけど、それまでの他の生きものたちの話が長い。なぜ表紙にメセン(多肉植物)のイラストが採用されたのかも謎。チランジア(エアープランツ)も出てきたし、著者は植物男子なのかも知れない。

 お薦め度:★★★  対象:皮はただの皮じゃない。皮の価値を見直したいひと
【上田梨紗 20190830】
●「皮膚はすごい」傳田光洋著、岩波科学ライブラリー

 生き物のカラダの中と外の世界を区別する薄い膜、皮膚。著者は皮膚の役割(防御と暑さ寒さの対策)を「家」に例えて分かりやすく説明しつつ、人類はその「家」を出たと言う。皮膚(ケラチノサイト)には五感さへあるそうで、そう言われると自分が最高のスーツを見にまとっている気がしてきた。私達の歯の保護に重要なエナメル質も元々皮膚からの進化だと言う。皮膚がすごいと、多くの情報が脳にいくことになり、結果脳が大きくなる要因の一部ではないかと考えられているそうで、エレファントノーズフィッシュという魚は、全体重に占める脳の重さの割合と、全身の消費量と脳の消費量の比率で、人間超えだという。足の裏の皮膚には、家族の一員として細菌がひそんでいる。皮膚は、どんな環境にも柔軟に対応し、私達生物を地球の色んな場所で生活させてくれている。役割は防御なのに、攻めの姿勢をとらせてくれる皮膚は最高のスーツすぎて、感想はタイトルの通りになること間違いなし! 余談ですが、美味しいコウイカは学習能力があり知能が高いそうですが、食べるなと言われる時代が来るのでしょうか。

 お薦め度:★★★  対象:お肌の曲がり角な人・アレルギーで悩んでいる人
【六車恭子 20190830】
●「皮膚はすごい」傳田光洋著、岩波科学ライブラリー

 皮膚のひとつの役割は「防御機能」、からだと外の世界と熱のやり取りをする「交換機能」でもある。だから生き物はみんな袋に包まれているのだ!  その袋、皮膚の驚くべき進化を遂げた働きが満載された本だ!
 皮膚の分厚い角層に網目状の構造があり、天然のラジエーターを備えるアジアゾウ、水との摩擦エネルギーを分散をすくなくして高速で泳げるサメ肌のサメ、古い皮を剥がれ落として脱皮する女仙、そして驚くべき進化を遂げた皮膚は、電気レーダーを鼻に持ち、情報を処理する脳の持ち主・エレファントノーズフィシュ。防御、威嚇、求愛のデモンストレーションの極みとして紹介されたコウイカの皮膚は優れた情報能力を発揮する。
 そして我々人類の祖先が体毛を無くしてから、ネアンデルタ一ル人が出現、体毛を失なうことで命がけで探求する脳を獲得する。五感からもたらされる情報を統合し、自分という存在を創る。それは過去から学び、未来への展望を可能にする。こうして未来に経験を託すのだ。
 科学はそんな情報や仮説をいわば煉瓦にして築きあげられた巨大でかつ成長を続ける建造物なのだ。しかも皮膚のケラチノサイトが五感の感覚器を持ち、脳の情報処理システムをあわせ持つ可能性もありそうなのだ。

 お薦め度:★★★★  対象:自分の皮膚の力に気づいていない方
【和田岳 20190828】
●「皮膚はすごい」傳田光洋著、岩波科学ライブラリー

 「皮膚は考える」の著者による岩波科学ライブラリー2冊目。「皮膚は考える」は、皮膚は最も大きな臓器であると主張しつつ、皮膚のバリア機能、情報伝達機能、外部刺激センサーとしての機能、精神や健康との関係などが紹介された。それとの違いを出すためなんだろう。この本では、さまざまな動物や植物、微生物の皮膚(外界との境界を守る膜・層)の凄さが紹介される。
 ただ、ヒトの皮膚の場合は、自身の研究の成果と、そこから考えた話を展開していたのに対して、この本では、ひたすら他人の研究の紹介をしてくれる感じ。専門外なのによく勉強してるなぁと思うのだけど、他人のふんどし感はぬぐえない。唯一の読みどころは、自身の研究に基づいて、皮膚は脳にも匹敵する能力があるとぶち上げる第9章。

 お薦め度:★★  対象:「皮膚は考える」をまだ読んでない人
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