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本の紹介「ハトはなぜ首を振って歩くのか」

「ハトはなぜ首を振って歩くのか」藤田祐樹著、岩波科学ライブラリー、2015年4月、ISBN978-4-00-029637-3、1200円+税


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【森住奈穂 20150826】【公開用】
●「ハトはなぜ首を振って歩くのか」藤田祐樹著、岩波科学ライブラリー

 あれは5年前、生まれて初めてバードウォッチングに参加した折のこと。ハトを見て博物館の先生が「なぜ首を振って歩くのか、聞いてはいけません!」。見慣れたハトの首振りの理由が、解明されていないなんて不思議。もともと人類学を専攻していたという著者は、二足歩行という共通項からヒトからトリへ研究対象を移し、現在は首振り研究者を自認。V字首振りのコアホウドリや、水中で首振りるカイツブリなど、さまざまな首振りに首を突っ込んでおられる模様。目が横についている鳥たちは、視覚のブレを軽減するために首を振っていて、さらに歩行の安定性や採食行動が首振るか否かを分けているのだそうだ。ただ、いろいろなパターンがあって単純なものではなさそう。ちなみにセキレイの尾振りも、「聞いてはいけません!」だったけれど、本書にはその謎解きも登場する。

 お薦め度:★★★★  対象:ハトに「なんでやねん」とつぶやいたことのあるひと
【西本由佳 20150823】
●「ハトはなぜ首を振って歩くのか」藤田祐樹著、岩波科学ライブラリー

 動物は動かなくてはいけない。鳥は空を飛び、地上では二本の足で歩く。空を飛ぶ生活に視覚が重要だから、鳥の目は大きい。そして、それを動かすなら、そのぶん筋肉が必要だが、鳥は体を軽くするため、それがもてない。そこで、目が動かないなら首を動かす、という方法をとっている。「首がよく動くなら、眼球なんて動かさなくてもいいじゃない」というのが、鳥の体の設計方針であるらしい。地上で歩くとき、二本足で歩くのは、四足歩行に比べて、どうバランスをとるかが重要になってくる。飛翔に適応した鳥の体幹はコンパクトで可動性が少ない。動かせる場所は、体幹からとび出した部分、腕(翼)、脚、首、尾である。翼と脚は動かすと進んでしまうし、エネルギーを使うので、バランスを取るには首なんか都合がいい、となる。首を振る、という行動が、空を飛ぶ、二本足で地上を歩く、という鳥の体の構造からひもとかれていく。生き物のすることにはちゃんと理由があるのだなと思った。

 お薦め度:★★★  対象:生き物のなにげないしぐさが気になる人

【萩野哲 20150825】
●「ハトはなぜ首を振って歩くのか」藤田祐樹著、岩波科学ライブラリー

 ハトはなぜ首を振って歩くのか?については多くの人が関心を持っているかもしれない。本書によると、まずヒトのような生物では前を見て歩いているのに対しハトでは横を見ていて景色が視軸に対して直交する向きに流れること、更に眼窩とそれに収まる眼球が楕円形で眼球が動かし難いこと、がその理由らしい。本書のすごいのはこの説明に終わらず、カモのような首を振らない鳥の場合はなぜなのかきちんと考察しているところである。歩き方や近距離長距離どこを見ているかなどが関係しているらしい。きちんと行った結果に基づいて、このような身近な生物行動の疑問に答えてくれる本は楽しい。

 お薦め度:★★★  対象:生物の行動に興味を持っている人、身近な生物の謎を知りたい人
【和田岳 20150827】
●「ハトはなぜ首を振って歩くのか」藤田祐樹著、岩波科学ライブラリー

 鳥の首振り行動という、ちょっと変わったテーマの鳥の研究者。ヒトや鳥の二足歩行の話。ウォーキングやホッピングが、スピードやエネルギー収支的にどうなのかを解説した後に本題。ハトがどうして首を振るのかを解説。重心の移動や視野の固定の両論併記な内容。その後は、おまけ。カモ類などハト以外の鳥が首を振ったり振らなかったりする理由を考え、左右に頭を振るコアホウドリや、水中で頭を振るカイツブリが登場。いきおいで、尻尾を振るセキレイや、体を振るヤマシギの話まで出てくる。
 鳥が頭や尻尾を振るのはどうしてか? よく観察会で訊ねられる質問なので、質問した人には、この本を紹介することにしよう。

 お薦め度:★★★  対象:ハトがどうして首を振って歩くのか知らない人

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