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本の紹介「疑似科学から科学をみる」
「疑似科学から科学をみる」マイケル・D・ゴーディン著、岩波書店、2025年11月、ISBN978-4-00-061728-4、2100円+税
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【森住奈穂 20260306】【公開用】
●「疑似科学から科学をみる」マイケル・D・ゴーディン著、岩波書店
科学は客観的で揺るぎない事実だ、との認識が揺らぐ。一時は真正の科学とされたものでも、主流から外れることで周縁化され、やがて擬似科学と呼ばれる。主流か異端か、その線引き基準が時代の状況に応じて大きく揺れ動くのは、活動の資金が社会的、政治的団体から供給されるという科学の構造にあるという指摘が鋭い。「擬似科学とは科学の影、科学者コミュニティを映し出す鏡」だと著者はいう。正しく疑うためには、まず知ること。薄い小さな本だけど、中身はすごく重たい。
お薦め度:★★★ 対象:正しく疑うためのツールを探しているひと
【中条武司 20260306】
●「疑似科学から科学をみる」マイケル・D・ゴーディン著、岩波書店
「疑似科学」とは「正しい科学とは何か」との対立の中で生まれてくるもので、そもそも「疑似科学というものは実在しない」と本著の冒頭で著者は述べる。一方で「実在す疑似科学」を哲学(認識論)からアプローチするのではなく、歴史学的に考えたのが本著である。その中で、著者は痕跡科学(錬金術、占星術など)、御用科学(アーリア物理学、優生学など)、反体制科学(骨相学、創造論)など、心霊科学(メスメリズム、心霊主義など)に区分し、それぞれの歴史的な経緯が述べられる。「疑似科学」というレッテルを貼られた科学者は、ほとんどの場合、疑似科学ではなく正当な科学と信じて行っているので、ただ断罪すればいいというものではない。一方で、現在は主流の科学といえるものも未来には異端となり、疑似科学と呼ばれるようになるかもしれない。それらを見極めつつ、科学情報に接する難しさを考えさせられる。最後の訳者解説がよくまとまっており、中身の復習と周辺学問の学びとなってとてもよい。
お薦め度:★★★ 対象:科学情報に接する私たち
【萩野哲 20260223】
●「疑似科学から科学をみる」マイケル・D・ゴーディン著、岩波書店
本書の疑似科学の定義は、明らかに科学の土俵に乗っていない宗教や迷信だけではない。著者は疑似科学を以下のように分類・分析する。痕跡科学=今では否定された過去の学説で、疑似科学の大半を占める。御用科学=ナチス(アーリア物理学)やスターリン(ミチューリン主義)のような独裁体制下の事例や優生学が例示されているが、今も某国では大手を振っている。反体制科学=主流でないだけでなく、主流からみて誤っており、更に脅威と見做される(創造論や未確認動物学)。心霊科学=メスメリズムなどの怪しいヤツ。グレーゾーン=真理はひとつであっても、あらゆるケースで白黒つけるのは困難そうだ。しかし、主流派の権威主義と周縁化された非主流派の反発、換言すれば、自分の正当性を主張する、または相手を貶めるため、関係者にとって線引きは必要で、ここに疑似科学は生まれる。
お薦め度:★★★ 対象:科学の信頼性を考えたい人
【和田岳 20260306】
●「疑似科学から科学をみる」マイケル・D・ゴーディン著、岩波書店
疑似科学を描くことで、科学について考える一冊。著者は科学史の研究者。欧米の疑似科学を痕跡科学、御用科学、反体制科学、心霊科学の4つに分けて、代表的なものを紹介し、それがなぜ科学ではないとされるのかが解説される。
痕跡科学とは、かつては科学扱いされていたが、分野の発達によって周縁に追いやられた分野。占星術や錬金術。御用科学とは、いわば抑圧的な政治体制に結び付いて生き残った痕跡科学。アーリア物理学、ルイセンコ主義、優生学。反体制科学の当事者は自分達こそ科学的と考えていることが多い。骨相学、創造論、未確認動物学、宇宙激変説、地球外生命体、フラットアース。すでに科学的に否定されているものもあれば、今後科学とされる可能性があるものもある。心霊科学とは、心理学あるいは心の能力についての研究で、科学的と認められていないもの。メスメリズム、心霊主義、超心理学(ESP)。
突飛な発想をすべて否定しては、科学の発展は望めない。そういう意味では疑似科学の出現をとめる手段はない。科学の権威が失われ、疑似科学が世間に広まってしまった今、より一層読む価値がありそう。ただ、予想できるように明確な明るい未来は指し示されない。
お薦め度:★★★ 対象:科学を信頼している人
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