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本の紹介「現代によみがえるダーウィン」

「現代によみがえるダーウィン」長谷川眞理子・三中信宏・矢原徹一著、文一総合出版、1999年4月、ISBN4-8299-0120-9、2800円+税


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【石田惣 20070223】【公開用】
●「現代によみがえるダーウィン」長谷川眞理子・三中信宏・矢原徹一著、文一総合出版

 ダーウィンの日本語版著作集を刊行するという企画に先立ち、彼の人物像、研究、そしてその成果を、歴史的背景や現代科学の視点から概説する書。ダーウィンのことならオレ(ワタシ)に語らせろ、という3人の進化オタク(矢原徹一、三中信宏、長谷川眞理子)の鼎談から本書は始まる。次章以降、3人はオタクから進化生物学者という本業に戻り、それぞれの専門分野からダーウィンの業績を再評価する。20世紀の生物学が明らかにしたこと、そして未だ明らかでない問題(例えば中立進化、種概念、性比など)の多くは、ダーウィンが当時の知識に基づいて論理を深め、すでに鋭い洞察を提示していたことが丁寧に説明される。ならば、ダーウィンの著作を一度読んでみたい、と思わせる点で、本書はその目的を十分に果たしている。

 お薦め度:★★★  対象:進化生物学を学びたい人、学び始めた人に。

【瀧端真理子 20071118】
●「現代によみがえるダーウィン」長谷川眞理子・三中信宏・矢原徹一著、文一総合出版

 本書は、前半が鼎談「なぜダーウィンを読むか」で、著者3人がダーウィンに出会うまでの研究史が語られ、そこから内外の科学史に話題が広がっていく。詳細な注がたいへん親切。
 後半では、3人が1本ずつ解説を書いている。矢原さんのパートは、『種の起源』の内容のコンパクトな説明と、以後の学問的発展の、遺伝子・統計学・ランダムウォークの観点からの紹介。ダーウィンが予見したさまざまな淘汰についても触れている。
 三中さんのパートは、「種の認知的理解」の問題を取り上げている。ダーウィンは、「種」を不変の自然類ではなく進化する実体であると一貫して主張し続けたという。三中さんは、記載分類の実践的有用性を認めた上で、時空的にひろがる系統発生過程を調べるためには、時空的に制約された認知的分類体系ではなく、立脚点が異なる系統的体系化(系統樹)が必要と指摘している。
 長谷川さんのパートでは、ダーウィンが『人間の起源と性淘汰』で取り組もうとした課題と、ダーウィンが生きた19世紀イギリスの社会状況が説明されている。

 お薦め度:★★★★  対象:進化の問題や科学史に興味のある人

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