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本の紹介「フジツボ」

「フジツボ 魅惑の足まねき」倉谷うらら著、岩波科学ライブラリー、2009年6月、ISBN978-4-00-007499-5、1500円+税


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【和田岳 20091021】【公開用】
●「フジツボ」倉谷うらら著、岩波科学ライブラリー

 フジツボマニアによるフジツボ愛の本。最初にフジツボ図鑑、最後にフジツボのペーパークラフト、間にはフジツボへの愛が詰まっている。
 フジツボの分類・形態・生息場所、生活史、ダーウィンとの関わり、文化との関わりなどなど。フジツボについての四方山の話が紹介されるが、いずれも概要説明にとどまる。フジツボの初歩の入門書。さらっと読めるけど、ちょっと物足りない。
 強くお薦めできるのは、44-45ページに載っているフジツボのキプリス幼生。とにかく、とっても可愛い。これは必見。

 お薦め度:★★  対象:海岸でフジツボを見たことがある人

【魚住敏治 20091020】
●「フジツボ」倉谷うらら著、岩波科学ライブラリー

 フジツボの美しい図鑑にはじまり、えっ、フジツボってエビ、カニの仲間だったのかと驚かされ、F(フジツボ)のノープリウス幼生、キプリス幼生時代の永住地探しからおとなのフジツボになるまでの非常に良く出来た生態に感心させられます。特にキプリス・ダンスの連続写真はなんともかわいい。
 ダーウィンとフジツボの研究について書かれた章では、なんとなく得をした気分になりビクトリア時代の海洋生物文学や、切手、食べかた、『フジツボセメント』まで読み進むと、人にうんちくを語ってみたくなります。
 最後にフジツボを組み立てるための展開図までついていて、ほんとに『そこまでする』。

 お薦め度:★★★  対象:フジツボって貝じゃないのと思っている方

【釋知恵子 20091022】
●「フジツボ」倉谷うらら著、岩波科学ライブラリー

 フジツボはちょっと苦手だった。山の噴火口のようなところは口みたい。固く閉じていると思ったら、ゆらゆらといくつかに分かれた舌を出し、引き込まれそう。でもでも、フジツボに藤壷という漢字をあてはめてみて、その不思議な生態を知ったら、苦手な気持ちはどこかに行って、なるほどなるほどと驚いた。小さな子どもはピポットダンスを踊って、自分がくっつくにふさわしい場所を探すらしい。船の底にも、ウミガメにも、クジラにも、どこにでもくっつくフジツボの成分は、人の暮らしに役立つ夢のセメントへの可能性を秘めている。美しいなと思う色とりどりのフジツボ写真も豊富。フジツボに惹かれたダーウィンの気持ちが少しは分かったかな。

 お薦め度:★★★  対象:不思議な生き物が好きな人に

【中条武司 20091023】
●「フジツボ」倉谷うらら著、岩波科学ライブラリー

 Fことフジツボの愛溢れる入門書。Fの分類、暮らし、成長、研究の歴史、文化などなど、Fに関するいろいろな情報盛りだくさん。入門書ゆえ、突っ込みが足らない部分もあるが、それは本の性質上しかたがないだろう。
 当たり前だけど脱皮殻ってあるんだなあとか、生殖器をニューとのばして交尾するんだあとか、キプロス幼生のダンスなど、興味深いFの生態がいっぱい。今度海に行ったら、たまにはFをじっくり眺めてみよう。

 お薦め度:★★★  対象:海に行くことのある人

【萩野哲 20091022】
●「フジツボ」倉谷うらら著、岩波科学ライブラリー

 フジツボ(F)に魅了された人のFの全てについての本。まず、美しくかつ種毎の違いを簡潔に記した図鑑から始まり、Fが「貝ではない」ことなどを解説した進化系統コーナーに続き、圧巻は副題にもなっているキプリス幼生の付着機構と、F研究の基礎を作ったダーウィンの寄与についてのページである。幼生の動画は岩波のHPで見ることもできる。ダーウィンは8年間のF生活の後、進化論をまとめ始めるのである。文化的側面や観察法にも触れ、更にF模型まで作れる、小さいながら盛りだくさんで、楽しく読める本である。

 お薦め度:★★★  対象:不思議な生き物が好きな人に

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