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本の紹介「富士山はどうしてそこにあるのか」

「富士山はどうしてそこにあるのか 地形から見る日本列島史」山武ー雄著、NHK出版新書、2019年5月、ISBN978-4-14-08858410、850円+税

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【西本由佳 20200216】【公開用】
●「富士山はどうしてそこにあるのか」山武ー雄著、NHK出版新書

 タイトルに富士山とあるが、富士山にかぎらず日本列島とその周辺の地形を解説している。ある土地の自然条件が、どのように人にとっての恩恵や災害などの問題に結びつくのか、知ることができる。リアス式海岸、洪水と切り離せない低地、活断層、埋立地といった、近年災害のみられる様々な土地条件について、地学や地理学の視点から、成り立ちや特性が説明される。まえがきを読んで、災害について知りたくて読み始めた人が第1章で挫折しないか心配。

 お薦め度:★★★  対象:自分が住んでいる土地について考えたい人
【冨永則子 20200219】
●「富士山はどうしてそこにあるのか」山武ー雄著、NHK出版新書

 日本列島は東から南は太平洋に面し、北から西は日本海やオホーツク海などの小さな海を隔ててユーラシア大陸の東の縁に並ぶ、大小の島々の連なり。地球規模で見れば大陸の端っこに連なる島々でしかないが、そこには美しい景観が存在する。その代表が富士山だ。他にも三陸が代表的なリアス海岸。砂浜が続く九十九里浜。小さな島が点在し潮が渦巻く瀬戸内海などなど。それらの美しい景観は過去の気象変動や、プレートの移動に伴う地震や火山噴火によって作られてきた。現在の私たちの目の前にあるこれらの美しい景色は過去からずっと同じであったわけではなく、激しく変化し続ける環境の歴史の中の現在の一瞬でもある。地学や地史系の本には「○○万年前」とか「〇〇億年前」などの言葉が普通に出てくる。こういう学問を専攻する人たちの時間感覚はどうなっているのかなぁ? 生まれて此の方、数十年、変わらずにある富士山の姿を“一瞬”と言われても… なかなかピンとこない。「富士山はどうしてそこにあるのか」という表題にひかれて読み始めたが、そこに辿り着くまでの一章が長い。人為的に作られた地形まで取り上げられてて幅広すぎて理解しようとしても追いつかなかった。

 お薦め度:★★  対象:日本列島の成り立ちに興味のある人に
【中条武司 20200219】
●「富士山はどうしてそこにあるのか」山武ー雄著、NHK出版新書

 自然地理学(地形学)が専門の著者が、関東地方の地形を中心に日本列島の成り立ちを語る本。タイトルの富士山の話は全8章のうちの第2章のみだし、ほとんどの話が関東地方中心なのであまりなじみがない。地形から見るといいながら、海岸平野とかの堆積地形や日本の特徴ともいえる急峻な山岳地帯の話もあまりない。間違ったことはあまり書いていないのだけど、何か魅力に欠ける本。

 お薦め度:★★  対象:関東平野に暮らす人
【西村寿雄 20200217】
●「富士山はどうしてそこにあるのか」山武ー雄著、NHK出版新書

 本の題名は「富士山は…」となっているが、多くは第四紀の地形発達史についてくわしく書いている。最初に、日本列島の成り立ちについて説明があり、「富士山はどうしてそこにあるのか」の話と続く。他の山々と違って富士山は何度も噴火を繰り返し、〈伊豆バー〉の先にあること、3枚のプレートの重なりあった所に噴火したことが特徴だと解く。続いて、広域火山灰の話、リアス海岸の話、気候変化による日本列島の形の変化、関東平野はどうして広いのか、活断層が平野を作る、干拓地の話などと続く。特に〈活断層〉の話では、兵庫県南部地震を起こした活断層の話など、活断層の捉え方の話も出る。今の日本列島の形を地質学から知れる意味もあり、面白く読める。

 お薦め度:★★★  対象:日本列島の姿に興味のある人
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