友の会読書サークルBooks

本の紹介「動物になって生きてみた」

「動物になって生きてみた」チャールズ・フォスター著、河出書房新社、2017年3月、ISBN978-4-309-25369-5、1900円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【西本由佳 20180624】【公開用】
●「動物になって生きてみた」チャールズ・フォスター著、河出書房新社

 人は考えることをやめられないみたいだ。素朴に自然を目にしたときでも、経験や知識、想像力をもって解釈をつけようとする。著者はアナグマになるために、アナグマと同じ視点になってみる。草の茂る地面の近くでは、視覚はあまり役に立たない。森のなかで、聴覚や嗅覚や触覚からもたらされる感覚に圧倒される。ただ、そこでその感覚に意味を見出す時点で、動物ではないと思う。著者は考え続け、語り続ける。人間って因果なものだなと思った。

 お薦め度:★★★  対象:人間に興味のある人
【六車恭子 20181026】【公開用】
●「動物になって生きてみた」チャールズ・フォスター著、河出書房新社

 本書は2016年のイグ・ノーベル賞生物学賞受賞作だという。果たして人が野生の生き物として生きれるのか?その命題に真正面から取り組んだ稀有の作品だ。この地球のを構成する土、水、火、風をくっきり象徴するような生き物たちを選び彼らの生活に寄り添う!
 さて、土を象徴するアナグマの暮らしはにおいの景色だという。アナグマの脳が自分の世界を組み立てる中心をなす「レンガ」は鼻で作られている地図なのだ!彼はアナグマこそ土地の守り神だと断言する。
 水の章はかわうそだ。果しないハンターは果てしなく追われる暮らしが待っている。多動性障害の塊のような彼を消費したいという欲望にかられた、川の層を押しのけて進む彫刻刀にたとえる。そしてあの厄介なヤツメウナギを夢中に殺す彼に神の使いという称号を与えるのだ。
 真にコスモポリタンな生き物はキツネだという。都会のキツネは緊張と危険の連続だ。地球の地場に同調し、興味をひかれたものに集中し、しかもその生の期間を完全に生きる。その集中力はキツネは夜も昼も卓球をしているようなものだ!という。
 最後の章がアマツバメ。移動することを運命づけられた彼らを聖職者に例える。実際動けない私たちがどれほどアマツバメを必要としていることか。鎌の形の翼を持って人の心を奪う鳥にはもつれた心を解き放つ力があるのだ。
 圧倒的な筆力で現代の神話の世界に誘う稀有な一冊!

 お薦め度:★★★★  対象:世界の隙間の時間の豊かさを味わってみたいかた
【森住奈穂 20180816】
●「動物になって生きてみた」チャールズ・フォスター著、河出書房新社

 「野生動物として生きるとはどんなことなのだろう」、ちらっとでも考えたことのある人は大勢いると思う。実際に行動に移した人は…まれだろう。著者はアナグマ、キツネ、カワウソになりきってみた。アカシカとアマツバメにも迫っている。ふざけた本だと思うなかれ。その経験は一時的なものでなく、著者の人生に並走(ときどき人間、ときどき動物)している。そして、子どもたちがいい仕事をしている!アナグマ生活のトム(息子)の頼もしいこと!感受性も適応力も大人はからきし敵わない。生理的嫌悪を抱かずにはおれない場面もあって、それこそ人間と動物の境界なのかと思う。人間と動物は共通するところが確かにある、けれど同じようにはなれない。けれど、たまには同じように生きてみても、いいかもしれない、たまには。考えさせられる。

 お薦め度:★★★  対象:人間とは?自分とは?深く考えたいひと
[トップページ][本の紹介][会合の記録]