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本の紹介「電柱鳥類学」

「電柱鳥類学 スズメはどこに止まってる?」三上修著、岩波科学ライブラリー、2020年11月、ISBN978-4-00-029698-4、1300円+税


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【萩野哲 20210407】【公開用】
●「電柱鳥類学」三上修著、岩波科学ライブラリー

 読者は、恐らく、鳥類と電柱との関わりを知りたくて本書を手に取るだろうが、その期待については、1)100種以上の鳥が電線に止まる、2)ねぐらに入る前の集合場所としても利用する、3)巣も作る(開いている穴を利用する、穴を開ける、巣を乗せるの3パターンあり)程度に要約されるだろう。なぜなら、割と電柱に関わる鳥の情報は少ないらしいのだそうだ。本書は、本文115ページ中の25ページが電柱とは何ぞやの記述に費やされており、どちらかというと電柱学の本である。さらに、3章(11ページ分)も感電の問題を扱っている。まあ、なぜ捕虫網を電線に接触させた人が感電し、1本の電線に止まった鳥が感電しないのか、今まで疑問に思っていた人には大変有用である。将来的に電柱はなくなる方向らしいので、電柱鳥類学は過去の歴史になるかもしれない。

 お薦め度:★★★  対象:鳥はともかく、電柱をより詳しく知りたい人
【西村寿雄 20210414】
●「電柱鳥類学」三上修著、岩波科学ライブラリー

 表題のような学問があるのかちょっと定かでないが、電柱に止まっている鳥について著者なりの見解をあれこれ書いている。はたして鳥の都合で電柱に鳥が止まっているのか、そこに電柱があるから鳥が止まるのか。まず最初に最近の電柱事情についてくわしく書いている。最近はいくつもの電灯線、電話回線が上下に張り巡らされている。おまけにトランス等の突起物もある。さて、その電線に止まる鳥は限られている。足の形がものをいう。雀に比べてカラスなどは電線でも電柱に近いらしい。上から獲物をねらうのに都合がいいのかも。よく疑問に思われるのは、鳥たちが電線に止まっても感電しないのはなぜか。それについては丁寧に書かれている。後半は、電柱にたくみに巣作りする鳥の紹介もある。都会の鳥たちの住宅事情(営巣事情)がよくわかる。

 お薦め度:★★★  対象:鳥の棲み家に関心のある人
【西本由佳 20210417】
●「電柱鳥類学」三上修著、岩波科学ライブラリー

 電柱に詳しくなれる本。電信柱と電柱は同じでないとか、電柱や電線のパーツの名前とか、なぜ電線にとまっている鳥は感電しないのかなど。鳥が電柱・電線をどのように使うかという本題ももちろん出てくるけど、電柱ってこういうものなのか、という読後感が強い。鳥たちは生活のなかでうまく電柱を使おうとするけど、電力会社にとっては困ったもので、いろいろな攻防がある。鳥たちの歴史のなかで、電柱があるのはほんの一瞬かもしれないから、興味深く見守っていこうという著者の姿勢に共感できた。

 お薦め度:★★★  対象:電柱がなかったら鳥はどこにとまるんだろうと思う人
【森住奈穂 20210422】
●「電柱鳥類学」三上修著、岩波科学ライブラリー

 電柱鳥類学とは、電柱と鳥類の関係を明らかにする学問というから、ワクワク読み始めたものの…こ、これは電柱の本では?!著者は電柱が大好きらしい。鳥が電線のどこに止まっているのか、上か中か下か、端か真ん中かを考察する2章と、電柱を巣にしている鳥たちが紹介される4章は、まぁそれらしい。それでもスズメが熱中症にならないか心配しているこちらにとって、腕金内部は平均で外気温より3度高くなると読めば心配は倍増、希少な鳥が接近した時は自動で止まる風車!など、よく分からない電力会社の対策ぶりに驚かされるも、モヤモヤする読後感は否めず。

 お薦め度:★★★  対象:電柱(と鳥)を眺めるのが好きなひと
【和田岳 20210413】
●「電柱鳥類学」三上修著、岩波科学ライブラリー

 スズメを中心に都市に生息する鳥の研究する著者による、電柱と電線と、そこを利用する鳥の本。
 電線と電柱の基礎知識からはじまって、電線にとまる鳥の話や、電柱で営巣する鳥の話、鳥と電力会社との戦いが紹介される。間には、電線にとまった鳥がどうして感電しないかの説明がはさまる。
 電線と電柱というのは、地球の歴史どころか、人類の歴史でも日は浅く、恐らく近い将来に消えていく。その一瞬に上手に利用している鳥たち。不思議なノスタルジーを誘うイントロは素晴らしい。思わず電線・電柱を見上げて、とまってる鳥をチェックしてしまうようになったから、著者の思惑は成功しているような気がする。

 お薦め度:★★★  対象:人がつくった環境を鳥がどう利用しているかに興味がある人
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