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本の紹介「大地の5億年」

「大地の5億年 せめぎあう土と生き物たち」藤井一至著、ヤマケイ新書、2015年11月、ISBN978-4-635-51022-6、900円+税


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【森住奈穂 20160825】【公開用】
●「大地の5億年」藤井一至著、ヤマケイ新書

 46歳の地球おばさんが5年前に家庭菜園をはじめて、1年前から働いていた恐竜兄さんが半年前失踪し、10日前生まれたばかりの小人たちが大規模な温室栽培をはじめた。約46億年前の地球誕生、5億年前の土壌誕生を筆者はプロローグでこのように形容する。本書は5億年間の土の成り立ちと、そこに居場所と栄養分を必死で求めてきた植物・動物・人間の試行錯誤の模様を紹介する。土や大地というと命を育む豊かで優しいイメージを抱きがちだが、本書を読んでその厳しさに心打たれた。特にここ100年間の人間活動による急激な変化は目をむくものがある。第4章は「今とこれから」。明日にまく種は私たちの選択次第だ。

 お薦め度:★★★  対象:土は一日にしてならず。その来し方を知りたいひと
【中条武司 20161028】
●「大地の5億年」藤井一至著、ヤマケイ新書

 地球46億年の歴史の中で、「土壌」があるのは植物が陸上進出をして以降の5億年らしい。それがタイトルになっている。植物とかかわった土壌の形成や農業と土壌の関係、現在社会における土壌の劣化などが語られるが、その中でも全般通して何度も出てくるキーワードは「土壌の酸性化」。放っておいたらただでさえ酸性化する土壌が、過剰に化学肥料を投与する農業によってさらに酸性化が進む。化学肥料を「麻薬」と例える筆者だが、私たちの生活はその麻薬から逃れられるのだろうか。
 追記:岩宿(遺跡)にはマンモスはすんでいませんでした。

 お薦め度:★★★  対象:最近の農業って何か違うんじゃないと思う人
【和田岳 20160820】
●「大地の5億年」藤井一至著、ヤマケイ新書

 土とは風化した岩石と植物遺体が混じったものらしい。つまり植物がいないと土はできない。で、陸上に植物が進出したのが5億年前。というわけで土の歴史も5億年というわけ。 土の研究者である著者は、植物や菌類との関わりの中でどんな土が形成され、それが他の生物や人の暮らしに、どれだけ影響するかを、熱く、そして脱線しながら語ってくれる。
 持続可能な焼き畑農業や水田での稲作が、人口増加を受けて変化する話など、ともすれば土の話題から離れているようでいて、土の立場から熱帯雨林の再生や、放棄水田の問題にもふれられる。自然見つめる新たな視点が得られる一冊。

 お薦め度:★★★★  対象:生物多様性や植物の暮らしに興味があれば、あるいは生物多様性の減少が気になる人
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