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本の紹介「珍奇な昆虫」

「珍奇な昆虫」山口進著、光文社文庫、2017年2月、ISBN978-4-334-03970-7、1000円+税


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【上田梨紗 20170825】【公開用】
●「珍奇な昆虫」山口進著、光文社文庫

 著者の山口さんは、ジャポニカ学習帳の表紙写真を撮影されていた方だそうです。この本の表紙の、ハナカマキリ(三齢幼虫)の美しさに感動しました。白色と桃色(少し淡い黄色も)の美しい色合い。本当に花のよう。でも、孵化したばかりの一齢幼虫は本能に訴えてくるショッキングカラーをしており、そしてメスの成虫は今までとは比べ物にならないぐらい心配になる色に変わる。この複雑な気持ちを例えるなら、中学校の時派手だった同級生と久しぶりにあったらとても落ち着いていた時(途中、彼氏の影響で清楚になる)のような感覚だ。他にも地球に住む生物の排泄物が1日どれくらいの量だなんて考えたことがなかった私には、タイのゾウさんのフンをフンチュウさんが分解してくれていることを知り、感謝と尊敬の気持ちでいっぱいです。
 他にも世界の色んな虫のスゴイ生態やシュールな写真がでてきて、やっぱり世界はスゴイと思っていたら、最後にでてきた日本の奴隷狩りをするサムライアリが1番スゴかった。甘えん坊とニートが絶対に働きたくないから命懸けで奴隷狩りをする。ぶれない。そしてスゴイ進化だ。本当に?と、疑いたくなる。生まれてから団体行動などしたことない者たちが、素早く規則正しく行動するのは感動より不気味だ。
 ネーミングセンスが素晴らしく、まさに有事の際は命懸けで戦う侍に、にている...かも。
 全ページフルカラー。

 お薦め度:★★★★  対象:昆虫好きな人、昆虫をあれ?かわいいかも?と思いはじめた人、昆虫スゴイぜ!と日々思っている人


【冨永則子 20170823】
●「珍奇な昆虫」山口進著、光文社文庫

ジャポニカ学習帳の表紙写真を撮り続けてきた写真家が綴る世界の昆虫探訪記。著者は昆虫に関わる仕事につくことを夢見ながらも現実的な選択から会社員となるが、たまたま見た昆虫展がきっかけとなり、脱サラしてフリーの自然写真家になる。研究者でもなく、フリーのカメラマンとして世界各地の珍しい昆虫たちを探し、写真を撮る。珍しい昆虫ということは誰もが行きにくい場所に存在し、なかなか目にすることができない存在であるということだ。撮れた写真の成果によって報酬は得られるだろうが、取材のための経費は持ち出しになるのかな? 普通の海外旅行では行かないような場所ばかりだが、チケットの手配とか現地でのコーディネートとか、かなりの人脈なども必要だろう。写真家としての実績を積んでいけば、それなりに手に入っていくだろうが初めは大変だったろうなぁ。登場する昆虫たちの珍しさより、そんなことばかり気になった。今は写真技術や機材が向上し、価格的にも手に入れやすくなってきた。プロとアマの境目がなくなりつつある現在、昆虫写真家として存在し続けるには『珍奇』だけでは厳しいだろうなぁ。

 お薦め度:★★★  対象:昆虫に限らず、珍しいもの好きに


【萩野哲 20170821】
●「珍奇な昆虫」山口進著、光文社文庫

昆虫の写真集はたくさんあるので、これもありきたりの1冊か?と思ってパラパラとページを繰ってみると、そうではないことがすぐにわかった!! 凶暴なツムギアリの巣に住むアリノスシジミや生態不明なドルーリーオオアゲハなど、どの事例も大変苦労して現地に赴き、撮影した写真(モノクロで残念だが)満載なので、楽しんで読める。昆虫に興味を持ってどこかに遠征するときは、私のような素人は昆虫の多様性ゆえに目標を絞り込めないのが常であるが、著者ぐらいの上級者になると、本書のような絞り込みができるのだと、大いに感心した。

 お薦め度:★★★★  対象:昆虫の不思議をもっと堪能したい人


【和田岳 20170825】
●「珍奇な昆虫」山口進著、光文社文庫

著者は、あのジャポニカ学習帳の表紙写真を40年以上にもわたって撮ってきたカメラマン。当然ながら本の表紙も、ジャポニカ学習帳風。「お宝写真を一挙披露」らしいけど、写真が全体的に小さいのが残念な感じ。
 昆虫の撮影旅行がらみのエッセイ集。東南アジア、オセアニア、中南米、アフリカ、日本と地域毎に章立てされている。ハナカマキリ、ゾウの糞にくる糞虫、カブトムシ相撲、ミツツボアリ、オオカバマダラの越冬地、ハキリアリ、バケツランにくるミドリシタバチ、アフリカの2大巨大チョウなどなど。面白い生態、大きな・綺麗な姿の、ちょいと知られた世界の昆虫が次々と登場する。
 世界のほんとうにあちこちに行きまくった旅行記であり、撮影秘話あり、虫の観察記録あり。関連した研究が紹介されていたり、と盛りだくさん。

 お薦め度:★★★  対象:不思議な格好いい綺麗な昆虫について色々知りたい人


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