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本の紹介「地球史が語る近未来の環境」

「地球史が語る近未来の環境」日本第四紀学会・町田洋・岩田修二・小野昭編、東京大学出版会、2007年6月号、ISBN978-4-13-063705-3、2400円+税


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【西村寿雄 20071220】【公開用】
●「地球史が語る近未来の環境」日本第四紀学会ほか編、東京大学出版会

 本書の〈はしがき〉に「自然そのもののはたらきに加えて、人類の活動によって加速的に変化している地球環境の現在を理解し、将来を予測するには、最近の地球史を総合的に考察する視点が不可欠である。」とある。地球は、もともと寒冷期と温暖期をくりかえしてきた。環境問題を論じるには、地球本来の気候変化と、人類活動との影響を冷静に見ようとする視点が求められる。その意味からも参考になる書物である。
 本書では「第四紀から地球環境を考える」「地球温暖化と海面上昇」「気候の近未来予測」など、各分野での研究成果が集大成されている。

 お薦め度:★★★  対象:地球環境を論じようとする大人

【魚住敏治 20071219】
●「地球史が語る近未来の環境」日本第四紀学会ほか編、東京大学出版会

 第四紀の地球環境からみてとれる一つ一つのデータから分析し、想像し、環境変化を読みとき、さらに全体像を構築するという、まるで推理小説のような楽しみがあります。
 その中で共通しているのは、人間の環境に対する働き掛けがいかに大きいかということのようです。
 タイトルになっている近未来の環境に対する取り上げかたは、それぞれの章で正直、正しいのかどうかよく分かりませんが、そこは自分自身で推理というのも良いかもしれません。

 お薦め度:★★★  対象:近頃の地球環境の話に疑問を持っている方

【中条武司 20071220】
●「地球史が語る近未来の環境」日本第四紀学会ほか編、東京大学出版会

 地学の研究といえば、世の中とは関係ない霞を食って生きているような印象があるかもしれません。しかし、本書に述べられている地学の研究、近過去を対象にした第四紀研究は、まさに私たちの生活と密接に関わってり、そして未来につながる研究だということがわかります。しかも第一線の研究者がこれだけ一般向けを意識して書いた本はまれかも。
 特に、海水準変動と温暖化がまねく海洋循環の変化を言及した第2章、デルタ(沖積平野)の成長・衰亡と人間活動を関わりを書いた3章、上高地の自然破壊を憂う第10章は、地質学の社会的意義を感じられておすすめの章です。

 お薦め度:★★★  対象:地質学に社会的意義が感じられない人へ

【和田岳 20071222】
●「地球史が語る近未来の環境」日本第四紀学会ほか編、東京大学出版会

 近過去(といっても数十年前〜数万年前)の環境の研究から、現在そして近未来を展望しようとする本らしい。気候変動、海面変動、植物相の変遷、哺乳類の絶滅史、人類史、人による大気・地表・河川環境の改変といったテーマが取り上げられる。
 地球温暖化が叫ばれている中、科学的な真実はなんだろう? と思う人も多いはず。そんなニーズには部分的ながら応えている。少なくとも、過去のどのようなパターンから将来を予測しているのか、何が議論されているのかの一端はわかる。
 とはいえ、全体的には、過去の現象の紹介に紙面をさいている割には、近未来への展望が弱い。大部分の章は、過去の研究成果がなくっても、現在から予想できる程度のことしか書いていない。それがものすごく不満。

 お薦め度:★★  対象:地球温暖化の議論の基礎の基礎が知りたい人

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