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本の紹介「びっくり深海魚」

「びっくり深海魚 世にも奇妙なお魚物語」尼岡邦夫著、エクスナレッジ、2022年7月、ISBN978-4-7678-3036-0、1600円+税


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【萩野哲 20221117】【公開用】
●「びっくり深海魚」尼岡邦夫著、エクスナレッジ

 これまで深海生物に関する書籍は写真集のようなものが多かったが、本書は一味違っている。深海魚の生態を摂餌、防御、繁殖の3章にまとめ、多数の写真や図で理解を助けており、読者はそれらによって浅海魚や淡水魚をはるかにこえる深海魚の奇想天外さに驚かされる。子どもの脱腸や極端に飛び出した眼に何の意味があるのか?なぜそんなものが進化したのか?研究の手段や材料の制限によってまだまだわからないことが多いので、謎の事項や解釈も多いが、それだけに今後の展開が楽しみ。掲載されている写真がもっと大きければもっとわかりやすかったのに。

 お薦め度:★★★★  対象:深海魚のとんでもない生態に触れてみたい人
【里井敬 20221219】
●「びっくり深海魚」尼岡邦夫著、エクスナレッジ

 海は広いな♪深〜いなあ♪ 水深1000m以上の海は全体の88%、深海は200m以上なので海のほとんどが深海。太陽の光は届かず植物は育たないが、魚はいっぱいいる。見たことのないフクロウナギやフエカワムキだけでなく、スケソウダラも高級魚の金目鯛も深海魚。
 深海魚は過酷な環境のせいで様々な進化を遂げている。水深500〜1000mでは、滅多に出会わない獲物を逃がさない為に、丸呑みできる大きな口や、口の先端にヒモを持ち先のルアーのようなもので獲物をおびき寄せる魚がいる。光が届かない海底で大きな眼でわずかな光を感じようとする者。逆に見ることを諦めて眼をなくした魚。光を放ったり放電したり、墨を吐く者までいる。
 一つ一つの項目は短く、バラエティに飛んだ深海魚の生態や形態を紹介している。

 お薦め度:★★★  対象:深海魚の進化の不思議を深く知りたい人
【和田岳 20221220】
●「びっくり深海魚」尼岡邦夫著、エクスナレッジ

 採食、防御、繁殖、人との関わりの順で、さまざまな深海魚の不思議な形や暮らしが紹介されていく。
 光を使い、電気を使い、口を飛びださせ、眼を飛びださせ、深海魚たちは食べ物をゲットし、身を守る。繁殖の仕方でなんといっても気になるのは、矮雄・寄生雄。メスの付属物になってしまう寄生雄というあり方は、ヒトのオスも微妙な気持ちにならざるを得ない。
 深海魚について色々知ることができる。しかし、体系だった説明ではなく、コラムが並ぶ感じ。深海魚の全体像がさっぱり判らない。変なイメージイラストが占める無駄な1〜2ページが随所に挿入される一方で、解説の理解を助ける図が、各ページの下に小さくあるだけ。その上、図は標本写真が中心。とても判りにくい。引用文献も示されていない。情報量は豊富だけど、本としての作り方が疑問。

 お薦め度:★★  対象:深海魚のネタをたくさん仕入れたい人
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