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本の紹介「アリの巣をめぐる冒険」

「アリの巣をめぐる冒険 未知の調査地は足元に」丸山宗利著、東海大学出版会、2012年9月、ISBN978-4-486-01847-6、2000円+税


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【萩野哲 20121216】【公開用】
●「アリの巣をめぐる冒険」丸山宗利著、東海大学出版会

 アリは昆虫の中でも高度に進化し、多数の個体を擁する群をなす種が多く、地球上の動物の中で最大のバイオマスを持っているらしい。そのように繁栄している昆虫にはそれとともに生活する他の昆虫も極めて多様である。本書は、アリとともに生活する昆虫を追い、誰も見たことのない生物多様性の世界を知ることに喜びを見出している著者の自伝ともいえる。多様なハネカクシたちの形態や生態に感心するのもさることながら、それを嬉々として記述する著者に対し、「何と幸せな人生なんだろう」と思ってしまう一冊である。

 お薦め度:★★★★  対象:好きなことに人生を費やすことに共感を覚える人たち

【中条武司 20121221】
●「アリの巣をめぐる冒険」丸山宗利著、東海大学出版会

 アリの巣に暮らす好蟻性昆虫を専門にする著者の、まさに「アリの巣をめぐる冒険」。北海道から東南アジアの熱帯雨林、南米・アフリカまで世界中をアリの巣をめぐって駆けめぐる。種ごとに違うハネカクシの生活、熱帯に住むアリそっくりのハネカクシ、脚も翅もないハエ、幼虫期をアリの巣で暮らす大阪にもいた新種のアリスアブなどアリの巣をめぐる昆虫たちだけでも何と多様性に満ちていることか。好奇心と向上心、努力を怠らない著者の姿勢に感心すると共に、これだけ調査行っていつ論文書いているのという疑問も。あえて苦言を呈するなら、一般書なのに学名の表記が多く煩わしい。これ編集のIさんは何も言わなかったのかなあ。

 お薦め度:★★★★  対象:生き物の生活の多様さを感じたい人

【六車恭子 20121221】
●「アリの巣をめぐる冒険」丸山宗利著、東海大学出版会

 人生の折り返し地点で自らのなしえた仕事のまさに子午線下を思わせるような成果が語られる熱いフィールド讃歌の書である。アリの巣をめぐる冒険は世界をめぐる潮流となって生物多様性の証拠を突きつけているようだ。好蟻牲昆虫の世界で繰り広げられている瞠目すべき事実がここではドラマのように進行する。未踏の調査地の足下には数々の新種が見いだされることを待ち望んでいるようだ。著者の熱意と人脈の連携が世界のパズルを解き進むのだろう。感度のいい濾過器のように掬いとる著者の研究態度を次世代の学究がここからぜひ学び取ってほしいものだ。小さなアリの巣から始るワンダーランドへようこそ!

 お薦め度:★★★★  対象:これから論文をものしようとしている人も、そうでない人も

【和田岳 20121221】
●「アリの巣をめぐる冒険」丸山宗利著、東海大学出版会

 こんな本はずるい。足元に広がる未踏の地を開拓していく著者。次々と新種が見つかる。近所の公園から、東南アジアの熱帯雨林まで、探検は続く。面白いに決まってる!
 著者は、アリと暮らすハネカクシ類を中心とした分類学者。だがその守備範囲は広く、アリと暮らす昆虫なら、アリクイエンマムシ、ノミバエ、アリスアブ、ヒゲブトオサムシなどなど、次々と手を広げる。ハネカクシなら潮間帯に住むハネカクシも調べてる。果てはなぜかツノゼミまでやってる。あの『ツノゼミ ありえない虫』の著者でもある。
 というわけで、最初から最後までワクワク読める一冊。ただ昆虫の拡大画像が多用されるので、虫嫌いの人にはお薦めできない。

 お薦め度:★★★★  対象:生物多様性に興味があれば、新種発見!にワクワクするなら。未踏の地の探検に興味をひかれるなら

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