友の会読書サークルBooks

本の紹介「赤の女王」

「赤の女王 性とヒトの進化」マット・リドレー著、ハヤカワ文庫NF、2014年10月、ISBN978-4-15-050418-2、1280円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。

[トップページ][本の紹介][会合の記録]


【萩野哲 20150223】【公開用】
●「赤の女王」マット・リドレー著、ハヤカワ文庫

 「禁断の果実とはセックスのことだったんだよ」から始まり、無性生殖より一見不利にみえる有性生殖がなぜ進化したのかの謎解きについて多くの学者が頭をひねった過程や、多くの生物の性の進化の事例を紹介している。更には男の本性、女の本性、美の効用など、タイトルをみただけで読みたくなる事項が満載である。

 お薦め度:★★★  対象:性に興味がある人

【六車恭子 20150227】
●「赤の女王」マット・リドレー著、ハヤカワ文庫

 1871年ダーウィンが「人間の起源と性淘汰」で投げかけた大いなる謎にその後、後輩の研究者たちが繰り広げた終わりのないレースのさまがここに収められている。
 そもそもなぜ性が存在するのか?性は遺伝子の混合、進化は生命体に起こる偶発事。進化は目的でなく、問題を解決する手段にすぎない。今日の世界の勝利者は明日の敗者、赤の女王の世界では走り続けることが運命づけられている!地上の生物はみな、赤の女王のチェスボードの上にいるのだ。それは寄生者と宿主、捕食者対獲物の戦いであるが、しかし何よりもまず、異性との戦いなのだ。本書は性淘汰という概念でヒトの本性の解明に迫ろうとする意欲作である。

 お薦め度:★★★★  対象:「鏡の国のアリス」にひかれて迷宮に迷い込める人ならだれでも

【和田岳 20151030】
●「赤の女王」マット・リドレー著、ハヤカワ文庫

 『鏡の国のアリス』に出てくる赤の女王は、周りが動いている環境では、動き続けなければ同じ場所にはいられない。と発言する(走りながら)。そこから、次々と変化を続ける寄生虫との果てしない共進化の中で、関係を維持するには(負けないためには)こちらも変化し続けなければならない。と、主に有性生殖が維持される理由として「赤の女王」仮説が提唱された。
 この本は、有性生殖の進化から、性比・性選択について、動物について研究に基づいて紹介した後、ヒトの性の進化について紹介していく。その話題は、男と女の性にかかわる戦略の違、心の違、異性に対する好みの違い。最後に、知能の進化の謎と多岐にわたる。
 ヒトの進化の話題をしばしば誤解を招く。男女に進化的な違いあるからといって、性差別は許容されない。性に関わるヒトの遺伝的な本性がどうであれ、それは道徳や倫理を否定しない。著者は繰り返し注意を呼びかけているが、たぶん勘違いする人がいそうな気がする。

 お薦め度:★★  対象:ヒトの性に関わる進化に関心のある人
[トップページ][本の紹介][会合の記録