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本の紹介「アゲハ蝶の白地図」
「アゲハ蝶の白地図 知られざる怪蝶の謎を追う」五十嵐邁著、ヤマケイ文庫、2025年11月、ISBN978-4-635-05019-7、1400円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
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【森住奈穂 20251219】【公開用】
●「アゲハ蝶の白地図」五十嵐邁著、ヤマケイ文庫
蝶の生活史を解明すべく、会社勤めのかたわら、またリタイア後に、世界を駆け巡った採集の記録集。1963年に始まり、舞台はインド、フィリピン、イラク、イラン、ブータン、中国、スラウェシ、ラオスなど。珍しい蝶を探すため、目的地は当然秘境。砂漠や高山、トラの影に怯えつつも、目指す蝶のためにはどんな苦労もいとわない。24年を費やし、ついにテングアゲハの孵化に立ち会った瞬間には、そっと涙をぬぐっている。その執念に感心するが、文章からは屈託のない人柄が滲み出ていて、現地の人々の描写も楽しい。極めつけは搭乗機の墜落事故。図版の中には蝶に混じって、その時の記念写真が掲載されている。
お薦め度:★★★ 対象:一風変わった旅行記を読みたいひと
【西村寿雄 20251217】
●「アゲハ蝶の白地図」五十嵐邁著、ヤマケイ文庫
著者の昆虫好きがこうじて世界のアゲハチョウを訪ね歩いた記録集。採集した経緯など記録風に書かれているので親しみ深く読める。世界にはアゲハチョウがこんなに多くいるのかとまず驚かされる。まだらなアゲハ、黄色ベースのアゲハ、黒が基調のアゲハ、・・様々。所変わればアゲハも変わる。チョウの写真はカラーで示されているので見やすい。
お薦め度:★★★ 対象:アゲハ好きマニア
【萩野哲 20251213】
●「アゲハ蝶の白地図」五十嵐邁著、ヤマケイ文庫
大手ゼネコンに席を置いた著者は、特に普通の人が行きたくない海外辺境地の営業所に赴任することが多かった。理由は、仕事以外にもうひとつの目的があったからだ。本書は著者が長年にわたって未知のアゲハ蝶の生態、そして系統関係の解明のために捧げた旅の記録である。テングアゲハやシボリアゲハの探索に成功した時の喜びや苦しみが生き生きと伝わってくる。正に情熱とか執念という単語が相応しい。著者は、自分たちが昆虫を探すのは人類の歴史のごく短時間だが、たとえようもない密度の高い時間だったと言う。もちろん著者の努力が最も大きかったが、時代運にも恵まれたように思う。当時も今も、このような生物の白地図帯で調査する機会はないか、または極めて限られる現実に、人間の愚かさの一面を見てしまうのである。
お薦め度:★★★ 対象:チョウ類探索の喜びを著者と共に楽しみたい人
【和田岳 20251219】
●「アゲハ蝶の白地図」五十嵐邁著、ヤマケイ文庫
建設会社に勤めていた時代から退職後まで、日本のアマチュアのチョウ類研究者として知られた著者が、1960年代から2000年頃までのアジア各地を中心にした採集行のエッセイをまとめた一冊。
1960年代のインドやフィリピン、1970年前後のイラクとイラン、1980年代のインド・ブータン、2000年前後の中国、1960年代から1990年代に繰り返し赴いたスラウェシ、1990年代のラオスやシンガポール、1970年代のオーストラリア。
テングアゲハの謎の生態を解明しようとしたインド、異形アゲハやチビマドアゲハの生活史を解明したイラクでの採集。珍チョウをひたすら採りまくるだけの退職後の採集行よりも、謎のチョウの生態を解明しようと明確な目的のある1970年代までの現役時代のパートの方が熱意が感じられる。
ただ、1980年代までの文章には、アジア各地の地元の方を下に見ている文章が多い。現地のことは考えず、ひたすら収奪してくる。そういう時代だったとも言えるが、はっきり言えば、読んでいて気分が悪い。
お薦め度:★★ 対象:二昔前、日本の虫屋が海外で何をしていたのか知りたければ
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