カラスの枝落とし行動データベース

　2015年9月、日本鳥学会大会に参加したら、愛媛県西部の高校生が、学校周辺をフィールドにクスノキ果実を食べる鳥の調査報告をしていました。そこで、カラスは、クスノキの枝を落として下で果実を食べる。という話をすると、その高校の周辺では、カラスがクスノキの枝を落とすということはないという。大阪府ではごく普通にクスノキやナンキンハゼの枝を落としているのに、この行動は全国区ではなかったらしい。
　という話をSNSですると、関東でもカラスの枝落とし行動なんか見かけないと教えて頂いた。俄然、カラスの枝落とし行動の広がりが気になりだしました。

　ちなみに、 大阪府では、随分以前から枝落としは見られていますが、いつ始まったのか正確な記録はまだ見つかっていません。植物担当の元学芸員が、2000年時点に「数年前から長居公園でクスノキやナンキンハゼの枝落としが見られる」と、博物館のメーリングリストに書き込んでいました。だとすると、大阪でのカラスの枝落とし歴は、少なくとも20年はあることになります。

　という訳で、カラスの枝落とし行動がどのくらいの地域に広まっているか、情報を集めてみることにしました。また、どんな樹種の枝を、どの季節に落とすのかの情報も記録してみたいと考えています。
　木の下に葉っぱや実・花・蕾の付いた枝が大量に落ちているのを見つけたら、以下の情報を記録して、大阪市立自然史博物館の和田（wadat＠omnh.jp）までお知らせください（なお、落としたのがカラスと確認している必要はありません。枝がたくさん落ちていたら、ぜひ報告ください）。

【カラスの枝落としの有無の判定基準（2015.12.11暫定版）】
・実（あるいは花や蕾）を付けたある程度の高さの樹（おおよそ樹高10m）が１本以上ある場合、その下に実（あるいは花や蕾）を付けた（あるいは付いていた跡のある）枝が落ちているかどうかを判断する。
・実（あるいは花や蕾）を付けた（あるいは付いていた跡のある）枝（あるいは果序や花序）が、10本程度以上落ちていた時、枝落としであると判断する（カラスが落としているのを観察した場合は、10本以下でもかまわない）。ただし強めの風で簡単に枝が落ちる可能性のある樹種の場合は（ブナ科など）、判断を保留する。

【記録項目】
・観察日
・観察場所（所番地まで出来るだけ詳しく）
・木が植わっていた環境（都市公園、学校、街路樹、庭木、山林など）
・木の枝が落ちていた樹種（種名が分からなければ落ちていた枝の葉っぱが分かる画像を付けてください）
・落ちていた枝に果実や花・蕾がついていたかどうか
・落としている鳥を観察した場合は、その種名と行動の記述
・観察者名と観察者の連絡先
・論文にまとめる際の観察者名公開の可否

　→実を付けたクスノキやナンキンハゼなどの木はあるのに、下に枝が散乱してない、という情報もお知らせ下さるとありがたいです。

　 以下のデータは、都道府県ごと、場所ごと、樹種ごとにまとめて、時系列順に並べる。
　情報をくださった方（敬称略）：赤澤久弥、池上研二、池上隆之、石川新三郎、市川顕彦、乾公正、上野勲、植村修二、大西清美、大橋正規、大矢樹、大矢麻由美、岡かおる、岡村和子、岡本素治、覚野良子、風間美穗、桂孝次郎、神谷良子、川上幸恵、河口和代、川島朋也、河地邦弘、河辺良、河村壽、木野浩一、久保田真江、久保田陽大、越川重治、近藤輝男、斉藤健、佐藤達夫、澤田勉、柴田佳秀、下湯瀬可奈子、白木江都子、副島猛、大地祥子、高田直俊、高鍋千佳子、高松葉子、瀧端真理子、竹下栄、田中光彦、田村比呂志、中院彰子、辻井了兌彦、土金慧子、灘本忠功、西尾ゆう子、西畑敬一、西村静代、野口聡美、野村浩作、野本康太、芳賀大、橋本啓史、長谷川匡弘、平軍二、藤井俊夫、松原始、三宅寿一、森小夜子、森下英美子、矢田部典子、山本かおり、横川昌史、横山康子、吉田小恵子、米澤里美、和田岳、ほか７名（本名不明の方３名、匿名希望４名）の合計７８名（もし匿名に変更したい方がいたらお知らせ下さい）

※木の下に多数の枝が落ちていても、実や花・蕾が付いてなかった場合、樹から離れた場所に運ばれて放置された場合は保留とし、ここには示していません。

●枝落としが確認された都道府県：北海道、千葉県、埼玉県、東京都、新潟県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、奈良県、大阪府、和歌山県、兵庫県、徳島県、香川県、愛媛県、鳥取県、岡山県、広島県、山口県、福岡県、佐賀県、大分県、鹿児島県（１都１道２府１８県）

●確認された市区町村
・北海道：羽幌町
・千葉県：市川市
・埼玉県：寄居町
・東京都：渋谷区、新宿区、世田谷区、台東区
・新潟県：新潟市（中央区、西区）
・愛知県：名古屋市（千種区、天白区）
・三重県：伊勢市
・滋賀県：近江八幡市、大津市、高島市、東近江市
・京都府：京都市（上京区、左京区,、東山区、伏見区）、八幡市
・奈良県：橿原市、河合町、広陵町、天理市、奈良市
・大阪府 ：池田市、泉佐野市、茨木市、大阪市（住之江区、住吉区、大正区、中央区、鶴見区、天王寺区、西区、東住吉区、東淀川区、福島区、港区）、貝塚市、交野市、岸和田市、堺市（北区、堺区、中区、南区）、四條畷市、吹田市、摂津市、大東市、高槻市、豊中市、寝屋川市、枚方市、松原市、箕面市
・和歌山県：御坊市、白浜町、田辺市、和歌山市
・兵庫県：芦屋市、尼崎市、伊丹市、神戸市（須磨区、中央区、灘区）、西宮市
・徳島県：徳島市、美波町
・香川県：丸亀市
・愛媛県：今治市、新居浜市
・鳥取県：湯梨浜町
・岡山県：岡山市（北区）
・広島県：尾道市、広島市（中区）
・山口県：周南市、山口市
・福岡県：福岡市（中央区、博多区、南区）
・佐賀県：佐賀市
・大分県：中津市
・鹿児島県：鹿児島市

●枝落としが確認された樹種：アカメガシワ、イブキ、エノキ、オガタマノキ、カキ（未成熟果実）、クスノキ、クマノミズキ（未成熟果実）、クロガネモチ、コブシ、サクラ（シダレザクラ、ソメイヨシノ）（果実の他に花も）、シロダモ、センダン、タカノツメ、タブノキ、トベラ、ナナミノキ、ナンキンハゼ、ハゼノキ、ホウノキ（花）、ムクノキ、ヤチダモ（未成熟果実）、ヤマザクラ、ヤマモモ、ユリノキ（花と未成熟果実）、ランシンボク。括弧内の特記が無ければ熟した果実の付いた枝・果序を落としていた。
エノキの記録（2015年以前）の中には、カラスではなく、植物が落としたものが含まれる可能性がある。ハゼノキとランシンボクとヤチダモは果序を落としていた。落とされたホウノキの花は喰われていた。

日本国内の枝落とし分布図

大阪府内の枝落とし分布図