●フィルターの色から見る懸濁物の季節および年変化
 採水時に,有機物などの懸濁物を除去するために水をフィルター(0.2μm)に通します.そのフィルターの色を記録した結果,地域による違い,季節及び年ごとの変化が見られたので報告します.

 採水は50mlか20mlの注射器で水を取り,フィルターを通します.そのフィルターに付いた色を色見本(けんだく物色度表)(PDF:40KB)と比べ,記録カードに記載しました.

 第1回から8回までの採水時にフィルターに付いた色を地図上に記しました.円のサイズが大きい方が20mlの注射器で採水した場所,小さい方が50mlの注射器で採水した場所です.具体的なデータを見たい場合には,こちらをご覧ください.
(↓画像をクリックすると別ウィンドウで拡大画像が開きます。)

第1回採水
(2002年11月)
第2回採水
(2003年2月)
第3回採水
(2003年5月)
第4回採水
(2003年8月)
第5回採水
(2003年11月)
第6回採水
(2004年2月)
第7回採水
(2004年5月)
第8回採水
(2004年8月)

○地域ごとのフィルターの色

 フィルターの色を見てみると,その地域ごとに様々な違いがあることがわかりました.
 その中で傾向を見てみると,大和川下流域,西除川,東除川,奈良盆地中央部ではフィルターの色はどの季節での比較的濃い色が付き,石川上流部などでは年間を通じてフィルターにあまり色は付きませんでした.
 大和川水系の水質汚染の原因は,その多くが生活排水に求められています.しかし,大阪・奈良の下水道普及率とフィルターの色の関係については,相関が認められませんでした.

○季節変化

 大和川下流,石川下流,西除川,葛城川下流,高田川などでは,秋から冬にかけての採水期間はフィルターの色が濃く,春から夏にかけての採水期間ではフィルターの色が薄くなる傾向がありました.これは,冬季には流量が減り,相対的に家庭排水などが多く川の中に流れ込むことによって,秋−冬季にフィルターの色が濃くなっていることが予想されます.

 逆に,初瀬川(大和川)上流,曽我川上流,竜田川などでは,春から夏にかけてフィルターの色が濃く,秋から冬にかけてフィルターの色が薄くなる傾向がありました.これは,これらの地域では周囲の土地利用が水田であることが多いところから,水田からの水の流入により,春−夏季にフィルターの色が濃くなっていることが予想されます.

 また,全体を通じて,夏季の採水の方が,フィルターの色が色見本のA側(緑系)が多くなる傾向がありました.これは植物プランクトンの発生と関係していると関係していると思われます.他には,冬季に河川改修などの工事が多く行われるため,その影響を記載されてくる方も多かったです.

○年変化

 2003年と2004年を比較してみると,2004年の方がかなりフィルターの色が薄いことがわかります.
 しかし,大阪・奈良の降水量を見てみると,2003年より2004年の方が降水量が少なく,流量が直接色の違いを反映している訳ではなさそうです.この年変化の原因については不明な点があります.

 このフィルターの色の変化は,上記の考察だけではなく,化学分析値と合わせて比較検討していかなければなりません.

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