■鳥班とは

 鳥班は、大和川水系の水辺の鳥の分布を中心に調査をします。とくに繁殖期の分布や、繁殖コロニー・集団ねぐらに注目しています。河川で見られる鳥だけでなく、ため池や水田周辺の鳥も調査対象に含めます。


■大和川水系の河川沿いの繁殖鳥類調査
 河川沿いに歩きながら、橋等によって分けた区間ごとに、河川敷内の水鳥や、周辺の鳥の種名・個体数・繁殖に関する観察内容を記録した。
 今回は、その結果の一部を紹介する。

■大和川水系のカワウの分布 (分布図を見る)(画像をクリックすると拡大します)
 1980年代に琵琶湖でカワウが繁殖するようになって以来、近畿地方のカワウは増えています。とくに2000年以降、京阪神でカワウがどんどん目立ってきて、繁殖コロニーや集団ねぐらが次々と見つかっています。今では奈良盆地でカワウを見るのは珍しくなくなりました。

■大和川水系のチドリ目鳥類の分布 (分布図を見る)
 チドリ類、イソシギ、コアジサシは河川敷の裸地などでしばしば繁殖する。特にイカルチドリは代表的な河川の鳥。
 調査の結果、コチドリとイソシギは広い範囲で記録されたが、イカルチドリは石川中流部と大和川本流で1ヶ所記録されたのみ。シロチドリとコアジサシは記録されなかった。

■大和川水系のセキレイ類の分布 (分布図を見る)
 セキレイ類は河川敷で繁殖しないが、代表的な河川敷の鳥。
 調査の結果、上流部にキセキレイ、中流部を中心にセグロセキレイ、中下流にハクセキレイが分布していた。
 周辺環境としては、セグロセキレイは農耕地周辺、ハクセキレイは都市化の進んだ場所で記録された。

■大和川水系のカモメ類の分布 (分布図を見る)
 奈良盆地の河川でユリカモメは記録されず、セグロカモメが1羽記録されたのみ。

■大和川水系のシギチドリ類の分布 (分布図を見る)
(イソシギとケリを除く)
 イカルチドリは石川のみで確認。コチドリはあまり記録されなかった。クサシギは奈良盆地中央部に集中して出現する地域があった。

■大和川水系のヤマセミとカワガラスの分布 (分布図を見る)
 ヤマセミは長谷寺辺りで確認された。カワガラスは初瀬川と寺川の上流部でのみ記録。

■サギ類について (画像をクリックすると拡大します)

ゴイサギ

コサギ

アオサギ
 大和川水系では、ササゴイ、ゴイサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アマサギ、アオサギといったサギ類が観察されます。この内、ササゴイを除く6種は、一緒に集団でコロニーをつくって繁殖します。大和川水系では、こうしたコロニーが何カ所か知られています。一方、ササゴイは、ササゴイだけの小さなコロニーで繁殖します。大阪府側では、少なくとも数年前には藤井寺市の大和川左岸にコロニーがありました。奈良盆地でのササゴイの繁殖は現在のところ知られていません。

■イソヒヨドリについて
 イソヒヨドリは、その名の通り海岸部によく生息している鳥ですが、しばしば内陸でも繁殖しています。大和川水系でも、内陸でしばしばイソヒヨドリが観察されています。

■ツバメ集団ねぐらについて 
 ツバメは、営巣している時以外は、ヨシ原などで集団になって眠ります。大和川水系では、奈良盆地に2ヶ所の集団ねぐらが知られており、この他にも奈良盆地に何カ所か集団ねぐらがあるようです。

■カワガラスについて 
 カワガラスは渓流の鳥です。大和川水系では、上流部に渓流がある石川水系には、あちこちに分布しているのですが、奈良盆地にはあまり生息していません。現在のところ確認できているのは、初瀬川上流部と菩提仙川のみです。

■イワツバメについて 
 河川の鳥ではありませんが、しばしば橋の下に繁殖コロニーを作ります。大和川水系では、以前から滝畑ダムでの繁殖が知られていましたが、2004年に奈良盆地の2ヶ所での繁殖を確認しました。

問い合わせ:動物研究室の和田 wadat@omnh.jp まで
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