あらまし(2001年10月)

 特定非営利活動法人(いわゆるNPO法人)の申請をしていた「大阪自然史センター」に対して,9月14日,大阪府知事からの認証がなされ,設立代表者の道盛正樹氏宛に通知されました(大阪府指令府活動第2-91号).この間の経過を振り返ると次のようになります.
 1998年2月の大阪市立自然史博物館友の会(以下,友の会と略す)評議員会で,評議員・学芸員による「友の会経営問題検討委員会」の設置を決定,メンバーに那須(館長・友の会副会長),道盛,梅原,左木山,山下,浦野(以上評議員),岡本,山西,川端,和田,佐久間(以上学芸員)を選出しました.この委員会は,友の会の事業がミュージアムショップを中心に規模が拡大してきている中で,会の経営についてさまざまな角度から検討し,改善策を見つけることを目的としたものです.その年の4月を皮切りに昨年11月まで,合計7回の会合を持ち,会計を2部制にするなどの改革を行なってきました.
 この検討委員会が設置されたちょうどその頃,特定非営利活動促進法(通称NPO法)が国会で制定されました(1998年3月25日,法律第7号).この法律は,阪神淡路大震災の時のボランティア活動をきっかけに,そのような活動をする市民団体が社会的に認められるように法人格を与えようとするものです.
 じつは過去に,友の会が法人格を得ることについて,評議員会で議論されたことがありました.友の会が大きくなり,さまざまな事業をし,きちんとした運営をしているのに,形の上ではひとつの「任意団体」でしかなかったからです.しかし,法人化のためには法令上の高いハードルがあり,それを突破することはあきらめざるをえませんでした.
 ところが今度のNPO法人は,法律に示されている12項目の活動のどれかに該当し,営利を目的としていなければ法人格を得ることができるようになっているのです.しかもその12項目の中には,「社会教育の推進を図る活動」,「環境の保全を図る活動」など友の会に当てはまりそうな項目がふくまれています.
 さっそく検討委員会の中で,友の会もNPOなら法人格をとれるのでは,この機会にぜひとったら,という提案が出され,2000年1月から検討委員会でその検討作業に入りました.法の内容やマニュアルを調べるだけでなく,「大阪NPOセンター」という支援団体にも何度も相談に乗っていただきました.
 はじめのうちは,友の会がそのままNPO法人になることを考えました.これによってすくなくとも友の会が「任意団体」ではなく,社会的,公的な団体として役所にも登記され,認知されることはまちがいありません.しかし,会員のみなさんがNPO法に示されている法人「社員」なることに対して違和感がないかどうか,つまり「博物館を積極的に利用して自然と親しみ,学習しようとする人々(友の会規約第2条)」の集まりである友の会と,意識的に「社会教育の推進を図る活動」や「環境の保全を図る活動」に取り組むことになるNPO法人とは,共通点もありますが必ずしも同じではありません.
そこで,友の会は自然史博物館を利用して学習する人々の会として今までどおりで,その母体となるNPO法人をあらたに設立し,友の会のお世話をする人たち,つまり評議員や学芸員が法人の「社員」になるというやりかたを採用することにまとまりました.NPO法人が友の会を包み込むというかたちです.法人は友の会事業を中心的な事業として位置づけ,その発展をサポートします.
経営問題検討委員会では,友の会事業の中で,来館者に対する書籍やグッズの販売サービス業務の比重が大きくなり,切り分ける必要性が指摘されていました(会計を2部制にしたのもその流れです).このような形で法人ができれば,来館者サービス事業を友の会事業とは別の法人の事業(ミュージアム・サービスと名づけました)とすることによって,それぞれにふさわしい運営を行なうことができます.また,友の会は博物館からボランティア事業(補助スタッフなど)の委託を受けて実施してきましたが,これも法人の事業のひとつとすれば,独自に力を投入することによって,いっそう発展させることができるでしょう.さらに自然史科学や博物館に関係する書籍などの出版も新しい法人の事業として考えています.法人とその社員はこのような事業を通じて「社会教育の推進を図る活動」や「環境の保全を図る活動」に貢献していくのです.
 友の会は昨年10月に臨時の評議員会を開催し,このようなNPO法人化についての議論を深めました.これを受けて11月にもう一度経営問題検討委員会を開催し,次のような骨子をまとめました.

名称 特定非営利活動法人大阪自然史センター
組織 特定非営利活動促進法に基づく特定非営利活動法人(NPO法人)
目的 広く自然史科学の発展と普及にとり組み,市民の自然に対する理解を深め,あわせて大阪市立自然史博物館の事業の進展に寄与する.
事業 1)大阪市立自然史博物館友の会事業,2)ミュージアム・サービス事業,3)出版事業,4)ボランティア事業,5)その他
会員(社員) 正会員,賛助会員,団体会員
理事 評議員,学芸員それぞれ数名,プラス1〜2名でスタート
友の会の運営 友の会事業は従来どおり評議員会で審議,決定する.友の会会費は,友の会事業に充当するものとし,法人が実施する他の事業に流用しない.
友の会規約 現行のまま.付則を設け,「法人に事業組織として参加する」の旨を入れる.

 この骨子は12月の評議員会で承認され,評議員と学芸員とで設立に向けての発起人会をつくることになりました.
 年が明けて1月20日に「特定非営利活動法人大阪自然史センター」設立発起人会を開催,設立の趣旨について検討し,設立の準備を進めることを決定,発起人代表に道盛正樹氏を選出しました.そして1月28日の友の会総会議事においては「特定非営利活動法人大阪自然史センター」の設立準備を進めていること,および来年の総会で,友の会がこの法人に合流する提案をする予定であることが報告されました(本誌3月号).またそれに向けて本誌上で法人に関する資料,情報を提供し,意見や質問に答えていくことを決定しました(すでに本誌4,5,6,8月号に「だいすけ・ミナコのNPO Q and A」を連載).設立趣旨書の文面は総会で配布されたほか,本誌4月号にも全文が掲載されています.
 まもなく定款や事業計画などの準備ができ,2月10日に24名の評議員・学芸員が出席して「特定非営利活動法人大阪自然史センター」設立総会を開催し,設立についての意思決定,定款承認,役員および設立代表者選任などを行ないました.設立代表者には道盛正樹氏が選出されました.また,役員の方々は次のとおりです(敬称略).
理事長:千地万造
副理事長:那須孝悌
理事:道盛正樹,梅原 徹,白木江都子,寺島久雄,浦野信孝(友の会評議委員),向井治雄,石田 惣(友の会会員),川端清司,山西良平,和田 岳(学芸員)
監事:加納康嗣(友の会会員)
設立総会の後,4月の「花と緑と自然の情報センター」のオープンが重なって少し時間がかかりましたが,申請に必要な書類をそろえ,5月31日に府庁に提出しました.そして,2ヶ月間,府庁で縦覧がなされ(特に意見などはありませんでした),その後の審査をパスして9月14日に認証の運びとなりました.翌日に大阪市立自然史博物館50周年・大阪自然史センター設立記念企画の梅棹忠夫氏と千地万造氏による対談「博物館むかし・いま」が予定されていましたのでたいへんタイムリーでした.
 定款は紙面の関係で本誌には掲載できませんが,希望する方は閲覧やコピーの配布を受けることができます.また,当館のホームページでも見ることができます.
      <やまにし りょうへい:博物館学芸員>

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