那須孝悌(なす たかよし)
略履歴
1941(昭和16年) 7月25日 長野県北安曇郡会染村に生まれる
1964(昭和39年) 3月 信州大学文理学部自然科学科(地質学)卒業
1967(昭和42年) 3月 京都大学大学院理学研究科修士課程修了
1970(昭和45年) 3月 京都大学大学院理学研究科博士課程単位修得
1973(昭和48)年 3月 大阪市立自然科学博物館学芸員補
1974(昭和49)年 4月 大阪市立自然史博物館(同上改称)学芸員
1995(平成 7)年 4月 同上学芸課長
1998(平成10)年 4月 同上館長
2001 (平成13)年 3月31日 大阪市を退職
2001(平成13)年 4月 大阪市立自然史博物館館長(嘱託)
現在に至る
研究分野
花粉化石を基礎とした古環境復元・古植物学が専門。日本各地の丘陵・平野部を構成する第三紀末〜第四紀(約500万年前〜現在)の地層中の花粉化石を研究し、植生や気候などの変遷を明らかにした。さらに、各地の考古学遺跡の花粉層序研究により、遺跡の立地環境やその時代の気候環境を明らかにし、遺跡の成立年代推定に貢献した。近年は韓国の旧石器時代から初期農耕成立期にかけての遺跡調査の共同研究を組織し、研究交流に貢献していた。
また、これらに関連し、花粉プレパラート標本、シダ胞子プレパラート標本の体系的収集とその顕微鏡写真図録の出版に尽力した。これらは花粉研究者の間で今なお、重要な参考書として用いられている。
博物館活動
昭和48年3月に大阪市立自然科学博物館学芸員補として採用されて以降、長居に移転した自然史博物館の学芸員として展示・普及教育活動に尽力した。
普及行事を行い、その参加者を博物館友の会に招き入れ家族で自然に親しませる事に熱情を注いだ。より専門的に学びたい市民には、学芸員とともにサークルを組織してアマチュア研究者への道を開く活動を基本に置き、大学・分野を超えて多くの後進を育成した。
市民参加の発掘として知られる長野県野尻湖発掘にも初期から参加し、これを支える専門グループとしての野尻湖花粉グループ、参加市民の受け皿組織となる阪神わかやま野尻湖友の会を組織した。
平成10年より大阪市立自然史博物館 館長に就任し、同時に大阪市立自然史博物館友の会副会長として、同友の会の発展に寄与するとともにNPO法人化にも協力した(特定非営利活動法人大阪自然史センター、副理事長に就任)。
長年、大阪市の文化財・博物館行政に力を注ぐだけでなく、日本各地の多くの博物館の設立準備に関わり、また、文部科学省・日本博物館協会などの場で各種委員会・ワーキンググループの委員として今日の博物館のあり方を問い続けた。海外においてもJICAより派遣されバンドン地質博物館のリニューアルに貢献した。また、地域の自然史博物館がそれぞれの個性を活かしながら連携することの重要性を唱え、西日本自然史系博物館ネットワークを設立、理事長に就任した。
各地の大学・研究所などで、地学・考古学・博物館学分野の講師をつとめ、博物館学芸員、研究者の指導に携わってきた。また、日本地質学会、日本第四紀学会、地学団体研究会などの評議員・役員をつとめ、学会の発展にも貢献した。
主要著書・編著書
1970.11.10 地学団体研究会地学事典編集委員会編「地学事典」(項目執筆).平凡社(東京)
1977.9.1 (湊正雄監修・地学団体研究会編)日本の自然.平凡社(東京), 223 ps.
1977.12.24 (共著:井尻正二・那須孝悌) 人類の誕生 −化石がかたる地球の歴史5−.千代田書房(東京), 157 ps.
1978.2.20 (共著:野尻湖発掘調査団編) ぼくらの野尻湖人 −ジュニアのための発掘ガイドブック−. 講談社(東京), 267 ps.
1979.10.17 (共著:井尻正二編) 大氷河時代. 東海大学出版会, 227 ps.
1982. (共著:柴崎達雄・新堀友行共編) 「第四紀」第2版. 地球科学講座 第11巻, 共立出版(東京), 370 ps
1985.12.19 (共著:近藤義郎・横山浩一ほか共編)岩波講座「日本考古学」 第2巻「人間と環境」, 317 ps.
1987.7 (共編・著:日本の地質「近畿地方」編集委員会) 日本の地質6「近畿地方」. 297 ps. 共立出版(東京).
1989.5 (共編・著:永井昌文・那須孝悌・金関恕・佐原眞共編)「弥生文化の研究」第1巻「弥生人とその環境」. 203 ps. 雄山閣出版(東京).
1991.2 (共著:亀井節夫編) 「日本の長鼻類化石」 築地書館(東京)
1993.6 市原実編著 「大阪層群」 創元社(大阪)
1993.12 「日本歴史館」小学館(東京)
1994.11 (共著:「ゾウの足跡化石調査法」編集委員会)ゾウの足跡化石調査法.地学団体研究会,地学ハンドブックシリーズ9:128 ps.
1996.10 地学団体研究会編「新版 地学辞典」(項目執筆). 平凡社,1443 ps.
1997.3 (共著:野尻湖発掘調査団編著)「最終氷期の自然と人類」,共立出版
1997.3 大阪湾と淀川のおいたち。大阪府漁業史編さん協議会編「大阪府漁業史」(第一法規出版)第一編,第一章:23-38。
1999.10 永原慶二監修「岩波 日本史辞典」(項目執筆)岩波書店, 1802 ps.
他、共著を含め学術論文多数。