| ビカリアのすむ海 | 第2展示室中央展示台 |

日本各地の、およそ1500万年前の地層から、大形のウミニナのなかまの化石が見つかります。細長い巻貝で、貝がらの周囲には、規則正しくならんだイボのような突起があり、一度見たら宝ものにしたくなるような貝です。近畿地方では、滋賀県けんや兵庫県で化石が見つかっています。この貝はビカリアといい、日本では、新生代第三紀中新世という地質の年代を代表する化石です。ビカリアのなかまは、中新世より古い時代もふくめると、数種類知られています。
ビカリアは、絶滅してしまった種類なので、ウミニナのなかまということはわかっても、どのような環境で、どのように生活していたのかわかりません。しかし、ビカリアと同じ地層から、中・小形のウミニナのなかまが数種類も見つかり、現在の河口干潟にすむヘナタリとそっくりな貝もあります。いっしょに見つかる二枚貝の化石も、現在の干潟や浅い海にいる二枚貝と近い種類なので、ビカリアのすんでいたのは汽水域の潮間帯と推定できます。
ビカリアの化石産地は北海道南部が北限ですが、産地によってはマングローブシジミやセンニンガイなど、熱帯地域のマングローブ沼にすむ種類の貝の化石が、いっしょに見つかります。マングローブ林は、現在の沖縄県やさらに南の地方の河口にあるものです。そんなところにすむ貝の化石が、富山県や茨城県など、現在の気候からは想像できない地方からも見つかっているのです。
ビカリアの繁栄していた中新世中期きのはじめころ、地質学的にはあっと言う間でしたが、日本の沿岸はかなり暖かく、本州各地の河口域にもマングローブ林がしげっていたことがわかりました。大きなビカリアが、無数に、干潟をはいまわっているようすを思い浮うかべてみてください。
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