質問コーナー 過去のやりとり(2000年4月-6月)

寄せられた質問 ・ 質問への回答

質問

2000/6/30 青森県南部町の松山美砂子さんの桜の開花時期についての質問
2000/6/30 静岡県のゆうすけさんのヘビの脱皮についての質問
2000/6/26 長野県のともみさんのヘビについての質問
2000/6/26 愛知県安城市の榊原美樹さんのハリモグラの口についての質問
2000/6/25 仙台市の藤田考一さんのチョウの幼虫についての質問
2000/6/23 三重県四日市市のHiroさんの黄色い桜についての質問
2000/6/23 埼玉県児玉郡のごんさんの植木鉢の下の虫についての質問
2000/6/22 京都のKAWAさんのクマンバチについての質問
2000/6/22 神奈川県川崎市の匿名希望さんのナンキンムシについての質問
2000/6/19 熊本県旭志村の中尾孝浩さんの水田の甲殻類の発生についての質問
2000/6/19 奈良県桜井市の吉備啓子さんのペリットについての質問
2000/6/18 沖縄県のやすでなんてヤダさんのヤスデについての質問
2000/6/17 三重県亀山市のまき・なおみ・まさひと・よしやさんのふうせん虫についての質問
2000/6/14 静岡県の匿名希望さんのガが灯に集まる理由についての質問
2000/6/13 大阪府の太田佳似さんのイソヒヨドリの巣場所についての質問
2000/6/12 八尾市の百瀬淳子さんのカブトエビの飼い方についての質問
2000/6/12 千葉県の鶴岡さんのスッポンの化石についての質問
2000/6/11 愛知県のM・Hさんのアシダカグモの糞についての質問
2000/6/9 京都府精華町の鍋野さんの草むらの謎の鳥についての質問
2000/6/5 愛知県の園田さんのツバメの古巣の撤去についての質問
2000/5/31 奈良市のみちこさんの謎のガについての質問
2000/5/26 青森県南部町の松山美砂子さんの腸内細菌についての質問
2000/5/26 静岡県のMさんの謎の虫についての質問
2000/5/23 茨城県日立市の庄司秀亮さんのヤツデについての質問
2000/5/23 名古屋市のドラエンモンさんのモンシロチョウの幼虫についての質問
2000/5/18 福岡県の広瀬さんのナモグリバエについての質問
2000/5/17 大阪市のMUYUKIさんの赤い虫についての質問
2000/5/16 大阪府の堀さんのサシガメが媒介する病気についての質問
2000/5/16 宝塚市の村田豊喜さんの赤いダニについての質問
2000/5/16 長崎県の匿名希望さんの双子の卵性と胎盤数についての質問
2000/5/15 福岡市の杉山奈津子さんの朱色のショウジョウバエについての質問
2000/5/15 大阪の宇根岡 亨さんのナマコの分類についての質問
2000/5/14 千葉県船橋市の田口さんのカメムシについての質問
2000/5/11 大阪市のMUYUKIさんのガの同定についての質問
2000/5/7 栃木県小山市の石向 稔さんのキツネナスについての質問
2000/5/7 東大阪市の匿名希望さんの校庭の謎の植物についての質問
2000/5/6 三重県大宮町の谷口富久夫さんのサクラの花が展葉より早い理由についての質問
2000/5/4 筑波大学の斎藤 猛さんの学芸員の採用予定についての質問
2000/5/2 羽曳野市のCHONBORINさんの夜に鳴く虫についての質問
2000/4/29 住吉区の匿名希望さんの亜寒帯に針葉樹が生える理由についての質問
2000/4/24 和泉市の古林正孝さんの謎のウマゴヤシについての質問
2000/4/21 京都府立医大のきしだ つなおさんの高速で飛ぶハエについての質問
2000/4/20 東京都中野区のキャロルさんのコバチについての質問
2000/4/19 神奈川県のH・Uさんのツバメについての質問
2000/4/14 和泉市の古林正孝さんの謎の植物についての質問
2000/4/12 長野県のKUPさんの風呂場の虫についての質問
2000/4/7 和泉市の古林正孝さんの虫刺されについての質問
2000/4/6 宮崎県の山内真由美さんの毛虫の鳴き声についての質問
2000/4/2 兵庫県のカリンさんのコウモリ?の声についての質問


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質問への回答
2000/6/30 青森県南部町の松山美砂子さんからの質問
 北海道にいた頃は、桜の花と葉はいっしょに出ていたように思います。青森では、花が先です。これは、桜の種類に関することなのでしょうか(つまり、北海道ではヤマザクラが多いためそう見えるとか)。それとも、気候に関する合目的性なのでしょうか。
 たとえばヤマザクラなど、とありましたが、種類によっては、ある程度きまっているものなのでしょうか。ソメイヨシノは北海道から、沖縄まで、花が先になりますか?

【岡本学芸員の答え】
 桜の花と葉が一緒か、花が先かは、種類によっておよそ決まっています。近畿地方の桜では、ヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラは葉と花が一緒に出ます。エドヒガン、ソメイヨシノは、花が先に咲きます。
 北海道には、カスミザクラとオオヤマザクラ(エゾヤマザクラ)のほか、恐らくソメイヨシノが植栽されていると思います。オオヤマザクラは、花が先か、葉と同時かという点に関して地理的に変異があるようです。オオヤマザクラは大阪では3月の中旬に開花します。花が先です。東北地方(福島県)で見たことがありますが、4月の初旬開花で、花ばかりでした。北海道では、5月に花と葉が同時に出るのかもしれません。
 桜の仲間の開花様式は、種類によって決まっていますが、花が咲いて何日後に葉が出るいうことが決まっているのではありません。花芽と葉芽は、それぞれが独自の決まりで成長をし、結果として、葉と花が同時に出るか、花が先に咲くかということを成し遂げているのです。したがって、緯度やその年の気候条件によって変化することは有り得ます。どのような決まりによって成長しているかは複雑で、すべて分かっているわけではありません。おもしろい例として、ソメイヨシノの花芽の成長開始には、冬の寒さが必要であることが知られています。一定の寒さを経験することによって成長が始まり、その後の暖かさの集積によって花が開く。そのために、鹿児島などの南国では、冬の寒さを経験しないために成長開始が遅れ、本州より開花が遅いことが知られています。
 ご覧になった桜の種類が何であるのかを特定することが必要ですが、もし同じ種類を見ておられるのなら、オオヤマザクラの可能性が強いと思います。そして、北海道では葉と花が同時で、青森では花が先という可能性もあると思います。
 「気候に対する合目的性」ということはないと思います。むしろ、「合目的的」に定めたルールが、分布域の端々では思ったとおりの結果を出さなくなってしまった、ということでしょう。もちろん、それが新たな可能性を育むものであるということも有り得ます。

2000/6/30 静岡県のゆうすけさんからの質問
 先日、友人と話していてふとした事からヘビの脱皮の話しになりました。でも、よく考えるととても不思議です。ヘビは甲殻類でないので、成長の為に脱皮は必要ないと思うし、他の爬虫類は(両生類も)あのような抜け殻を残した脱皮はしないでしょう?僕は手や足が無いのが何らかの原因だと思うのです。ウミヘビは脱皮するのだろうか?たぶんしないような気がします。人間のアカと同じようなものなのでしょうか??

【和田学芸員の答え】
 甲殻類のように外骨格を持っていなくても、成長のためには古い表皮を更新する必要があります。とくに爬虫類のように固い表皮がある場合は、そのままでは成長できません。というわけで、ヘビに限らず爬虫類は脱皮します(カエルなどの両生類も脱皮します)。確かにこういった脊椎動物の脱皮は、古い表皮が脱落するという意味で、人間のアカと同じようなものです。だから、人間も脱皮すると言って間違いではありません(日焼けしたときに実感すると思いますが)。
 ヘビの脱皮がよく知られているのは、全身の皮が同時にはがれて、それがつながっているためです。同じ爬虫類でも、トカゲは脱皮の時、皮がバラバラにはがれるので、ヘビのような”脱皮殻”にはふつうなりません。

2000/6/26 長野県のともみさんからの質問
 ある高原に行った時、ヘビを見ました。赤(オレンシに赤をたしたような色)と黒のしましまだったのですけど、種類は何ですか?あと毒はあるのでしょうか。

【和田学芸員の答え】
 ジムグリだと思います。背中側も赤と黒のしましま模様だったとすると、まだ幼蛇だと思います。成長すると、腹側には赤と黒のブチブチ模様が残りますが、背中側の模様はほとんど消え、茶色になります。毒はありません。

2000/6/26 愛知県安城市の榊原美樹さんからの質問
 小学校1年生の国語の教科書に「どうぶつのはな」という説明文の教材があります。その中の文を抜粋します。
「はりもぐらのはなは、ながく つきでています。
はなの さきで、おちばや つちをかきわけて、ありや しろありをたべます。」
 初めはなんとも思わなかったのですが、よく読んでみて、私は、ハリモグラの口はないのか?と思いました。はなで土や落ち葉をかきわけて、はなで食べるのかと思ったのです。
 ハリモグラの口がどこにあるか、教えてください。どうぞよろしくお願いします。

【樽野学芸員の答え】
 ハリモグラの口は、長く伸びた鼻面の先にあります。小さくて少ししか開きません。ここから円筒状の長い舌を出して、アリをくっつけて口の中に入れます。舌の表面はねばねばした液に覆われていて、アリがくっつきやすくなっています。
 ちなみに鼻と口とは接近していますが、穴はもちろん別々です。

2000/6/25 仙台市の藤田考一さんからの質問
 アゲハチョウの幼虫らしいものを捕まえました。いままで見たこともないような大きさで、5cm以上あります。これは、なんの幼虫でしょうか?


【金沢学芸員の答え】
 クロアゲハの終齢幼虫です。茶色と白色のまざった斜めの帯の形からそう判断されます。体長約55mmですから、終齢の最後にはその位の体長になるでしょう。

2000/6/23 三重県四日市市のHiroさんからの質問
 今年の5月頃、奈良公園に遊びに行ったときに、黄色い桜を見ました。その、花の名前を教えてください。

【岡本学芸員の答え】
 黄色の桜で有名なものには、「鬱金(うこん)」と「御衣黄(ぎょいこう)」があります。このどちらかだと思います。どちらも、オオシマザクラ系の里桜です。「鬱金」の方が、純粋に薄い黄色の花をつけるのに対して、「御衣黄」は緑や紅の筋が入るようです。

2000/6/23 埼玉県児玉郡のごんさんからの質問
 最近ガーデニングに凝っています。よく植木鉢の下に団子虫やワラジ虫、尻上げ虫(はさみ虫)がいるのを見かけます。今年はとくに多いようです。これらの虫は一体何を食しているのでしょうか?
 カマドウマやヤスデ、ムカデ、ゲジゲジの類も一体屋内で何を食して生きているのでしょうか。害があまりなさそうなので,殺しもせず「共生(?)」しております(ムカデを除く)。
 またおかビル(俗称?)といって地上に住むヒルの話しもきいたことがあります。話しによれば人の血を吸い、けっこう珍しくもないようなのですが、これについてよければ写真入りで見てみたいです。

【金沢学芸員と山西学芸員の答え】
 シリアゲムシ類(シリアゲムシ目)というグループがあって、ハサミムシ類(ハサミムシ目)とは別なものです。ハサミムシ目は雑食性ですが、動物食の傾向が強く、生きた虫も死んだ虫も食べ、共食いもします。ヨーロッパの種類には、花弁や若葉を食害するものもいます。
 カマドウマ類は雑食性で、野菜などの植物の他に、死にかけた昆虫も食べます。ヤスデ類は主に植物食で、腐った落葉や果実、カビ類、キノコ類、新芽の柔らかいところを食べます。ムカデ類とゲジ(ゲジゲジは通称)は昆虫などの小動物を捕食します。
 ダンゴムシやワラジムシは、顎脚というよく発達した口器で、植物質の物を噛み砕いて食べます。
 おかビルは、ヤマビルのことだと思います。山地に分け入れば出会うことが出来ます。樹上で待機していて、哺乳類の体温(赤外線)を感じとって落下・吸着・吸血する動物です。「学研生物図鑑、水生動物」にカラーの図が載っています。

2000/6/22 京都のKAWAさんからの質問
 突然ですが、蜂の名前を教えていただきたいのです。実物をはっきり見たことが無いので上手く説明できませんが、大きさは多分握り寿司程で体は短い毛で覆われて黒っぽい色をした蜂なのですが…。
 当方は、京都に在住しているのですが周りの人間何人かにリサーチした所私を含め、《クマンバチ》と呼んでいるのですがホントにそのような名前なのでしょうか?全くくだらない質問で恐縮ですが、気になって夜も眠れません。《クマンバチ》と言うのは、京都の方言でしょうか?教えて下さい。

【松本学芸員の答え】
 にぎり寿司程度とはずいぶん大きいです。日本で最も大型のハチはオオスズメバチで、中でもその女王は体長40mm、翅をひろげて60mmくらいです。ただこのハチは体が黄色と黒の横縞模様でお話のハチとは違うみたいです。
 体が黒色という点からするとクマバチが考えられます。こちらは体がずんぐりしていて胸部の毛(背面)が黄色なので、すぐにそれとわかります。でもにぎり寿司ほど大きくなく、体長30mm程度、翅を広げて45mm程度です。
 あと考えられるのはマルハナバチの仲間のクロマルハナバチです。こちらは大きさはクマバチと同じくらいで、胸部も腹部も黒い毛に覆われています.

 地方によってはスズメバチのことをクマバチ、あるいはクマンバチと呼んだりします。スズメバチとクマバチは全く性質が違うのですが熊のほうがスズメより危ない感じがするためか混同されています。スズメバチは主に肉食で社会生活を送り、攻撃性も毒性も強いのに対し、クマバチは植物食(蜜・花粉)で自分から攻撃してくることはありません。

2000/6/22 神奈川県川崎市の匿名希望さんからの質問
 5月の中旬くらいから朝、蚊に刺されたようなあとが頻発し、ある日、ベットでナンキンムシを発見しました。その後、バルサンをたいたり、ベット(下の土台、マット)もあきらめたのですが、まだ、たまに刺されています。ほかに、どのような場所を見たらよいのでしょうか?
 家は築10年くらいの3階建、出るのは私の部屋だけ。隙間があるとしたら、天井にカーテンレールが支えられなくなって天井に2-3mmの隙間ができてきたぐらい。一応、怪しいところは直接殺虫剤を噴霧しました。あと、なにかいい方法がありましたら、教えていただければ幸いです。

【金沢学芸員の答え】
 トコジラミ(ナンキンムシ)は、最近大都市で増加しています。人が寝る場所の近くの隙間(ベッドの中、壁の隙間、柱の裂け目、床板の間など)に昼間は隠れていますが、小さな虫ですから、なかなかわかりにくいです。となると薫蒸剤を使うことになります。よくバルサンの話を聞きますが、あれはそれほど強力でなく、薫蒸する空間を完全に密閉しないと効かないでしょう。ナンキンムシは天井裏や長屋の隣の家から隙間をとおってやってくることがあり、そういう場合にはバルサンでは無理でしょう。
 ただ被害を受けないようにするためには、虫除けスプレーを被害を受けやすいところにスプレーしておくという方法があります。虫除けスプレーが効くかはわかりませんが、マダニに食いつかれたときにも効くので、多分大丈夫でしょう。また、一つの部屋だけの被害であれば、他の部屋で寝るのはどうでしょう。
 マメ科のインゲン類の葉をベッドの下の床に5-6枚まいておくと、葉にある釣針のような毛にトコジラミが捕らえられるという話もありますが、現実的ではないと思います。
 どうしても完全に退治したいのであれば、薬局や駆除業者に相談して、強力な薫蒸剤を入手して、数日家をあける覚悟で、家全体を目張りして薫蒸する必要があります。

2000/6/19 熊本県旭志村の中尾孝浩さんからの質問
 水田に見られる生物として、カイエビやホウネンエビなどがあると思いますが、これらが大量発生するということは珍しいのでしょうか?というのも、同じ近所にたくさんの田んぼがあるのに、ごく一部でしか確認されていません。何か理由があるのでしょうか?

【山西学芸員の答え】
 推量ですが、カエルやアメリカザリガニが天敵だと思います。このような動物が減れば、競争相手はもともと少ないので、大量に発生することがあり得るでしょう。あるいは、今まで農薬で発生のレベルが押さえられていたのが、農薬がマイルドなものに変わるなどして、急に増えることもあるでしょう。
 かれらの卵は産み落とされた田んぼで冬を越し、翌年田植えの水が入ったら孵ります。このような生活史のために分散能力は弱く、毎年同じ田んぼで発生する傾向があります。

2000/6/19 奈良県桜井市の吉備啓子さんからの質問
 シマフクロウの勉強を子供がしていて(3年生)、ペリットと言う言葉を聞いて返ってまいりました。よく分かりませんので、教えてください。
 1.何を表している言葉なのか
 2.シマフクロウのなにかに関係があると思いますので、どんなときにその言葉が使われるのか

【和田学芸員の答え】
 ペリットとは、口から吐き戻される不消化物の固まりのことです。タカ類やフクロウ類がペリットを出すことはよく知られています。他にもムクドリやカラスなど、けっこういろんな鳥がペリットを吐き出します。
 フクロウ類のペリットをほぐしてみると、ネズミや鳥など食べた動物の骨や毛がでてきます。これを調べると、何を食べていたかがわかります。シマフクロウのペリットを調べると、おそらくどんな魚を食べたのかがわかるだろうと思います。

2000/6/18 沖縄県のやすでなんてヤダさんからの質問
 アパートの駐車場などでヤスデが異常発生していて、大変困っています。ここ二、三年の事なのですが、市の方に来てもらい、薬を頂いたのですが、粉の薬で住んでいる方に害はないのか気になります。家の中にも、進入してくるのでとてもきもちわるいのです。どんな性質を持っているのでしょうか。家は土地も低くなっていて、周りに畑などもあります。教えてください。

【金沢学芸員の答え】
 本当にヤスデ類とすれば、たぶん世界共通種でどこでもいるヤケヤスデの可能性が高いと思います。ヤスデ類は腐った植物、新芽、新根などの柔らかい部分、まれには動物質のものを食べます。ヤケヤスデであれば、全く無害ですから、気にする必要はありません。
 薬に関しては、どんな薬かわかりませんので、薬害があるかどうかは不明です。ヤスデ類は落葉の下を好みますから、そういう環境を無くせば、少しは減ると思います。

2000/6/17 三重県亀山市のまき・なおみ・まさひと・よしやさんからの質問
 今、ふうせんむしについて調べています。辞典をみても、のっていません。くわしいことを知りたいので教えてくれませんか?
 また、どこにいますか?つかまえて、観察したいと思っています。飼い方も教えてください。

【金沢学芸員の答え】
 「ふうせんむし」と呼ばれる昆虫は、水生のカメムシであるミズムシ類(足などにできる水虫とは別物)で、ほとんどはコミズムシです。ハネの下から尾端にかけて気泡をためて、水底にもぐったり、浮いたりするので、そう呼ばれるようです。方言に近く、普通の辞典には載っていません。「ミズムシ」で調べてみて下さい。
 6月にプール掃除をすると、たくさん見つかります。他にも、落葉などの有機物がたまった水たまり(防火用水など)、池、沼など、わりとどこにでもいます。
 飼い方としては、ユスリカやカゲロウの小さな幼虫を食べるので、まずそれらを増やします。大きな容器に水と落葉を入れて、長い間外に放置しておくとユスリカなどが産卵するでしょう。その中に捕まえたミズムシ類を入れます。あるいはミズムシ類がいた場所の落葉などを水ごともってくることです。水がくさらないように、エアーレーションで空気を送る必要があります。

2000/6/14 静岡県の匿名希望さんからの質問
 夏、街灯などに虫が集まっているのを見かけます。カナブンのようなものは、電球にぶつかってこつんこつん音を立てているのはよく聴きますが、蛾はなぜか電灯のまわりをくるくる回っているような気がします。調べてみると、走光性というもののために、電灯にあつまるらしいですが、なぜ、くるくる回っているのでしょうか。蛾は、光に向かって飛び続けているつもりなのですか?

【金沢学芸員の答え】
 蛾(などの夜行性の昆虫)が光に集まる原因については、昔からいくつか説があります。代表的な説としては、日没後に活動を始めるとき、白々とした空や、月のあかりで明るい空に向かう走行性があるためだというものです。
 最近では、点光源と月などの天然光源の違いが原因だとする説が有力になっています。蛾が夜に飛ぶときには、月や星の光の方向をたよりに飛んでいるようです。昆虫にはよくあることなんですが、天上から降り注ぐ光と一定の角度を保って飛べば、地上から一定の高さで真っ直ぐに目的の方向に飛べるのです。
 ところが人間が人工の光源をつくって野外に設置し始めると、困ったことになりました。点光源からの光に一定の角度を保とうとすると、渦巻き状に飛んでその光源に集まってしまうのです。それで蛾が灯りに集まると言われています。
 カナブンなどの甲虫でもメカニズムは全く同じと考えられますが、蛾は体が柔らかいので、こつんこつんと音がせず、ちょっと異なるように思えるんでしょう。

2000/6/13 大阪府の太田佳似さんからの質問
 まだ、繁殖を確認したわけではありませんが、現在、JR奈良駅に、イソヒヨドリ1ペアが滞在しております。4月18日と6月8日に雄が囀っているのをみつけ、今朝、雌も一緒にいるのを確認しました。
 巣を作っているとすると、どんな場所にありそうですか?

【和田学芸員の答え】
 もともとは岩礁などのすき間に巣をつくっていたのですが、現在市街地周辺で繁殖している個体は、建築物のすき間に巣をつくっていると思います。イメージとしては、セキレイ類、スズメ、ムクドリなんかと似たような場所です。

2000/6/12 八尾市の百瀬淳子さんからの質問
 今、田植えが終わり、田では、カブトエビがたくさん見られます。子どもたちは喜んで採ってくるのですが、すぐに弱って死んでしまいます。エサや飼い方など、教えていただけたらと思います。

【山西学芸員の答え】
 カブトエビって、いかめしい姿をしていますが、けっこう軟らかくて傷つきやすい動物ですから、持って帰るときには気をつけましょう。カブトエビの一生は短く、水田に水が入ってから夏までの1〜2ヶ月の間に、卵からかえって、大きくなり、卵を産んで死んでしまいます。卵は乾燥に強くてそのまま冬を越し、翌年、田植えの水が入るとその刺激で孵化します。このような生活史だからこそ、冬には水がない田んぼでも発生を繰り返すことができるのです。ですから、カブトエビを長い間飼いつづけるのはもともと無理なのです。けれど、うまく飼って卵を産ませてやることができれば、その卵をとっていおいて、次の年に孵化させることに挑戦してみてもよいですね。
 家で飼うにときは、小さな水槽でいけます。田んぼの土を少しもらってきて底に敷き、深さ10cm(深すぎるとよくない)ほど水(水道水を汲み置きしたもの)を張り、必ずエアレーション(ブクブク)をするようにします。様子を見て、水が悪くなるようだと交換してやります。食物は、植物食で、水田の雑草の芽生えなどを食べていますから、そのようなものを集めてきて入れてやります。

2000/6/12 千葉県の鶴岡さんからの質問
 国内で400万年前のスッポンの化石が見つかったというニュースを見たのですが、これは原生するスッポンと同一種になるのでしょうか?
 それから、西日本では縄文時代の遺跡からスッポンの骨が見つかりますが、東日本では今のところ中世以降にしか見られないようです。もともとは東日本には棲息していなかったのでしょうか?自然史の方面からはどのように考えられているのかを教えてください。

【樽野学芸員の答え】
 2000年6月10日付けの朝刊に載っていた大分県安心院から見つかった化石のことを指しておられると思います。朝日新聞によれば「ニホンスッポン」が見つかったとされています。どうやって同定したのかはわかりませんが、それが正しければ日本の現生種と同種ということになります。
 江戸時代以降の遺跡では、東京都の3遺跡から産出したのが東端です。中世以前では千葉県の3遺跡(縄文〜弥生)から出ています。東日本とはどこから東をいうのかよくわかりませんが、関東以西においては、縄文時代から食べられていたようです。中世以降に分布を東へ広げたというようなことは、知られていません。

2000/6/11 愛知県のM・Hさんからの質問
 家の直径15cm程の換気口の外の格子の真下に、黒くて直径1mm、長さが5mmほどの糞が落ちているんですが、これは、アシダカグモの糞でしょうか?アシダカグモの糞の形状はどんなものなのでしょうか?以前に換気口のある部屋などで、アシダカグモが出たことが数回あるので、心配です。

【金沢学芸員の答え】
 巨大なアシダカグモであろうと、クモですから糞はほとんどしないと思います。アシダカグモの糞を実際に見たことがないので、明言できないんですが、クモは昆虫などの小動物の体液を消化液で処理してから吸うので、糞はほとんどしないでしょう。出すとしても余分な水分と老廃物のみの液体と思います。
 アシダカグモはたいていの家に1頭は棲んでいて、クロゴキブリなどの大型の昆虫を捕食してくれる”益虫”です。昔から「クモは殺すな」という言われますが、これはクモが害虫退治をしてくれることを知っている先人の知恵です。私はクロゴキブリとアシダカグモのどちらとの同居を望むかと訊かれれば、アシダカグモと答えます。

2000/6/9 京都府精華町の鍋野さんからの質問
 京都府精華町に引っ越しました。カラスより少し小さく、鳩より大きく、お腹以外はグレー、草むらに住んでるみたいです。旋回しながら飛び、サギのように「ケッ!」と鳴きます。
 今まで見たこともない鳥です。是非、知りたいので、教えてください。

【和田学芸員の答え】
 もう少し鳥の特徴を説明して欲しいところですが、大きさと色合いと鳴き声、そして京都府精華町の草原に棲んでいるということから、ケリだと思います。大型のチドリの一種で、近畿地方では、農耕地周辺を中心にけっこうふつうに観察されます。飛ぶと、翼の根元の白と、先の黒のコントラストが鮮やかだと思いますが、いかがでしょうか。

2000/6/5 愛知県の園田さんからの質問
 今年、我が家の玄関にツバメが巣を作り出しましたが、残念なことに途中で放棄したのか行方不明になり、作りかけの巣が残っています。放棄した巣の場合、残しておいたら来年来てくれる可能性はあるのでしょうか?

【和田学芸員の答え】
  今年巣を放棄した理由が来年もあれば、来年もまた放棄するか、最初から来ないかも知れません。しかし、それは巣を残しておいても、取り除いてもあまり変わらないでしょう。むしろ、ツバメは、しばしば古巣を利用して繁殖します。例え放棄した巣でも置いておけば、来年利用するかも知れないので、残しておけばいいと思います。

2000/5/31 奈良市のみちこさんからの質問
 これは庭で写しました。蝶なのか蛾なのか。不気味でした。名前等を 教えてください。


【金沢学芸員の答え】
 ヤママユガ科のシンジュサンという種類の蛾の成虫です。幼虫はシンジュ、ニガキなど多種の葉を食べ、5〜6月、8〜9月の2回、成虫が羽化します。蛹で越冬して、今頃羽化します。

2000/5/26 青森県南部町の松山美砂子さんからの質問
 腸内細菌は、いつから腸にいるのでしょうか。生まれたときは、腸内は無菌なのでしょうか。つまり、赤ちゃんのうんちはきれいなのでしょうか。
 無菌だとしたら、腸内に菌が入ってくる経路は経口ということになりますよね。その場合、胃を通過するのに腸内細菌は抗酸性ではありませんよね。赤ちゃんの胃のpHは大人とは違うのでしょうか。
 どうやって腸内に菌が入ってくるのか、とても不思議なのでおしえてください。

【佐久間学芸員の答え】
 人間を含め、全ての哺乳類の腸管の中には様々な微生物が生息しています。中でも牛の仲間のルーメン(反芻胃)にすむ微生物群は有名です。ここにすむ細菌群は絶対嫌気性で、ルーメン細菌と呼ばれ、植物質(セルロース)の消化を助けています。こうした宿主(ウシ)と微生物群の関係は「消化共生」と呼ばれています。このルーメン細菌は消化上必須の物ですから、伝搬についても興味をもたれ調べられています。出産直後から隔離して育てた場合、ルーメン細菌を持っておらず一定期間母ウシと生活する必要があることがわかりました。子ウシはしばしば母ウシのよだれ(と多分一緒に反芻している未消化物)をなめとりますが、この過程を経ているのではないかと言われています。
 こうしたルーメンは持っていなくても、他の多くの動物・鳥類・魚類などでも消化管の中にたくさんの共生菌を持っています。小腸以降の腸内にいるので「腸内細菌」と一般に言われ、ビフィズス菌や乳酸捍菌や大腸菌が含まれます(一口に大腸菌などといっても、これらは病原性などで細かく分けられます。腸内細菌の大腸菌は通常病原性はほとんどありません)。これらの細菌群の役割も、ウシの場合と同様の消化を補助する役割です。人が消化できない繊維質を大腸菌が嫌気発酵してできるのがメタン(おなら)です。食べ過ぎたり、外国へ行って急に油っこいものばかり食べたりすると下痢をしたりするのは、この腸内細菌の生態系バランスが崩れるためだと言います。

 さて本題の「赤ちゃんが腸内細菌を持っているか」ということですが、生まれたばかりの赤ちゃんが最初に出す便にはほとんど腸内細菌はいません。ところが、呼吸や寝具などから雑多な菌を取り入れ、24時間後の便にはそれらが反映されます。48時間ぐらいでは、「幼児型ビフィズス菌」が優勢になるようです(母乳か、人工乳かでも少し様子は違うらしい)。とにかく、赤ちゃんには最初から腸内細菌がいるのではなく、外部から取り込みます。
 その感染過程には2つの説があります。一つには産道での感染、そしてもう一つは乳房など母体の付着細菌に由来するのだという説(この場合は経口感染)です。どちらが正しいかは、はっきりしていません。母親から子へ、血縁があるもの同士のあいだで共生者や寄生者が伝わることを生態学の用語で「垂直感染」といいますが、もしかすると腸内細菌もそうして受け継がれているのかも知れません。

 【参考文献】「のぎへんのほんシリーズ 共生の科学」小沢正昭著、研成社、¥1200

 腸内細菌のPh嗜好は、多分中性でしょう。そのために十二指腸より上流にはいられないのだと思います。ただ、酸性条件で長期生存はできなくてもすぐに死ぬわけではありませんから、通過は十分できると思います(胃液は酸性ですが、腸液はアルカリ性で中和されます)。

2000/5/26 静岡県のMさんからの質問
 今朝見てしまった以下のものはなんでしょうか。


【金沢学芸員の答え】
 ゲジ(体長が28mmまで)かオオゲジ(体長が45mmまで)でしょう。触角が長く、ゲジで3センチまで、オオゲジで8センチまでです。
 私はゲジの成体の可能性が高いと考えます。ゲジの成体は触角を含めると約6センチですから、いわゆる「尾ひれ」(人がびっくりしたときの誤差)を加えると、体長10センチという話にかなり近いです。普通の家に多いということも推定の理由です。ゲジは薄暗い湿った穴の中をすみかにしていて、住宅地では下水道、浄化槽、それらに続くパイプ内でよく見られます。害は全くありません。

2000/5/23 茨城県日立市の庄司秀亮さんからの質問
 ヤツデの葉の裏側には気孔はないと教わりました。が、このことはヤツデの生活とどんな関係があるのか教えてください。

【岡本学芸員の答え】
 陸上生活をする植物では、気孔は葉の裏側に多いのが普通です。葉の表面は、クチクラという水分や空気を通さない層でおおわれており、水分が蒸散するのを防いでいます。しかし、呼吸や光合成のために空気を取り入れることが必要なので、気孔という開閉できる小さい穴があいているのです。葉の表側に気孔があると、日光の直射を受け、温度も上がり、水分もどんどん蒸発するので、いつも気孔を閉じておかなくてはならない、ということになってしまいます。葉の裏側は、涼しく、水分条件もましです。ヤツデには見られませんが、葉の裏側に毛を密生している植物もあります。裏側であれば、毛を密生していても光を受けるのに邪魔になりません。マスクをかけて呼吸をするような感じで、水分が蒸散しすぎるのを防ぐことができます。
 気孔が葉の裏側に多いのは、体内の水が蒸散しすぎるのを防ぎながら空気の出し入れをするということを上手に行うために、葉の表側と裏側が役割分担をしているのだと考えればよいでしょう。日光をよく受けられるような姿勢に葉を広げている植物によく見られる形です。
 日光に対して葉を垂直に広げるのを避けている植物もあります。ユーカリのように葉が垂れ下がっていたり、単子葉植物などで葉が直立している植物がその例です。これらの植物では、表裏の区別がつけにくいような葉をしていることがあります。このような葉では、表と裏の両面に気孔があります。
 また,スイレンのように水面に葉を浮かべる水草では、表面だけに気孔があることが多いです。水の心配がない環境なので、空気を効率よく取り入れられるところに気孔を配置しているのです。

2000/5/23 名古屋市のドラエンモンさんからの質問
 モンシロチョウの幼虫を飼っているのですが、1ぴきだけ、おしりの所が茶色くなっています。ちがう種類の幼虫なのでしょうか。

【金沢学芸員の答え】
 モンシロチョウの幼虫に二つのタイプがあるという話は聞いたことがありません。違う種類だとすれば、前半部の形態もかなり異なるはずです。キャベツで飼育しているとしたら、ヨトウガやハスモンヨトウの幼虫がキャベツを食べますが、モンシロチョウの幼虫とは形態がかなり異なります。
 その幼虫もモンシロチョウで、その幼虫のおしりだけが茶色くなっているとしたら、二つの可能性が考えられます。一つは「糞が透けて見えている」場合です。この場合、程度の差はあっても他の幼虫もそうなっているはずです。もう一つは寄生されている場合です。アオムシサムライコマユバチなどがモンシロチョウの幼虫に卵を産み付け、孵った幼虫が体の中を食い荒らしてそのうち出てきます。そういった寄生蜂が透けて見えているのかもしれません。

2000/5/18 福岡県の広瀬さんからの質問
 自宅の庭で家庭菜園をしているのですが、えんどう豆に「ナモグリバエ」の被害が出ました。大半の葉が被害にあっていますが花は咲きました。色々調べてみたのですが、駆除方法が載っていません。駆除することは不可能なのでしょうか?
 また、その場合「えんどう豆」をそのまま育てても収穫には問題ありませんか?近くに「トマト・レタス・茄子・ピーマン・ジャガイモ」等を植えていますが悪影響はありますか?教えていただけると助かります。

【松本学芸員の答え】
 ハモグリバエのなかまは割と寄主特異性が高いのですが、なかにはずいぶん広い範囲の植物につくものがあり、そういった種が現在農業害虫として問題になっています。ハモグリバエに関しては、http://www.tomen.co.jp/agro/guide/T_90A.htmが詳しいのでご参照下さい。自然史博物館という性格上、農作物の虫害に関しての専門家はおらず、駆除方法についてはよくわかりません。
 ナモグリバエの被害は、健康な葉が少なくなることで、結実が悪くなることや、実の生育不良などにあらわれます。かなりひどく食害されている場合は、収穫は少なくなるかもしれません。
 ナモグリバエは非常に寄主範囲が広く、マメ科、キク科、アブラナ科などを加害します。これらの植物があれば被害にあう可能性はあると思います。

2000/5/17 大阪市のMUYUKIさんからの質問
 駐車場のブロック塀に真っ赤(きれいなトマト色)をいたアブラムシがたくさんいました。植物の害虫になるちっちゃな虫です。たぶんアブラムシだと思うのですが…。それから墓参りに行くとまた、墓石やその廻りの石にもいっぱいいました。これは珍しくなくこの季節になると石に集まってくる虫なのでしょうか?とてもきれいなトマト色だったのと、栄養分などなさそうな石の上にたくさんいたのが不思議で、この虫について知りたいです。

【金沢学芸員の答え】
 最近、話題になっている赤い虫のような動物には、2種類あります。
 一つはセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシで、セイタカアワダチソウに集団でついているアブラムシです。数年前に見つかった外来性の種類です。もう一つは昆虫ではなく、カベアナタカラダニというダニです。お尋ねのものはこれでしょう。約20年前くらいから大阪府を中心に西日本で見られるタカラダニ類の一種です。もう少し詳しくは、
こちら

2000/5/16 大阪府の堀さんからの質問
 先日、子供が見たことのない虫に刺され、保険所に虫と一緒に持っていったところサシガメであるとのことでした。辞典で調べたところ、「南米に生息するものはシャーガス病を媒介する」との記述がありました。発見場所の付近には木も生えておらず、体長も辞典に記載されているよりも長かったので(触角を除いて20mm以上)、もしかして国外から持ち込まれたのだとすれば、と心配になりました。
 インターネットで「シャーガス病」「サシガメ」をキーワードにして検索したところ、こちらの質問コーナーで非常に良く似た写真を見つけました(
1999/6/10付け広島ベーベさんからの質問)。金沢学芸員様の回答によれば、「ヨコヅナサシガメ」とのことですが、標準の体長とシャーガス病その他との関連の有無について教えて下さい。シャーガス病は非常に怖い病気のようなので気になっています。よろしくお願いします。

【金沢学芸員の答え】
 
シャーガス病についての知識は私にはありません。ヨコヅナサシガメなどのサシガメ類は、蛾などの幼虫の体液を吸うための口吻がとても発達しており、その口吻で人を刺すことがあります。ほとんどの場合は、人がサシガメを捕らえたときに逃げるために反撃するんですが、刺された人はかなり痛みを感じます。日本産のサシガメに刺されたことにより、病気になったという例を聞いたことがないので、あまり心配は要りません。
 どんな虫に咬まれたり、刺されたりしても、ほぼ同じ様な対処方法が有効です。すぐきれいな水で傷口を洗い、抗ヒスタミン剤を塗り込みます。腫れてきたら冷やして、症状がひどい時には、病院に行きます。特にアレルギー体質の人は、すぐ病院に行った方がいいでしょう。

【茂似太の補足】
 
その後、堀さんから保健所の回答をお知らせいただきました。
・持ち込まれたサシガメは、ヨコヅナサシガメであった。
・日本産のサシガメから病気を媒介された事例は無い。
とのことです。

2000/5/16 宝塚市の村田豊喜さんからの質問
 家のブロック塀に赤い虫(1mm以下のクモとかアブラムシに似た形)が大量に発生しています。知らずにさわってしまうとスグにつぶれて赤い汁が出たり、服についたりします。何という虫で、害はないのでしょうか?

【金沢学芸員の答え】
 
カベアナタカラダニと考えられます。約20年前くらいから、大阪府を中心に西日本で見られるタカラダニ類の一種です。
 岩礁で見られるハマベアナタカラダニに近い種類で、ヨーロッパからシバについて侵入したそうです。菌類の胞子を食べるという噂もありますが、どんな生活をしているかはよくわかっていません。
 つぶれて赤い汁がつくといっても、小さなダニですから、たいしたことはありません。近縁の外国の種類が人を刺したという情報もありますが、このカベアナタカラダニではそういった報告は今のところありません。駆除のためには発生源を探して除去するのが一番効果的です。

2000/5/16 長崎県の匿名希望さんからの質問
 私の娘は双子です。出産の時、胎盤が二つ出てきたため二卵性双生児だと思っていました。先日、あるテレビ番組で、一卵性双生児でも胎盤が二つある場合があると知りました。どうしてもどちらかハッキリさせたい場合はDNA鑑定をするのがいいといっていました。子供が大きくなった時、一卵性か二卵性かきちんと教えてあげたいと思っていますが、今の状態では、どちらかわかりません。DNA鑑定以外に、判別する方法はないのでしょうか?教えてください、お願いします。

【樽野学芸員の答え】
 
「ふたごの育て方」(天羽幸子著、国土社、1971年)によると、一卵性双生児でも胎盤や羊膜・絨毛膜の数に3通りあります。
  1.胎盤2、絨毛膜2、羊膜2
 これは、二卵性双生児とまったく同じです。しかもこのパターンが約30%あるそうです。
  2.胎盤1、絨毛膜1、羊膜2
 このパターンが最も多く66%。
  3.胎盤1、絨毛膜1、羊膜1
 この場合はわずか4%。
ということで、やはり胎盤の数では卵性を判断することはできません。参考にしたのは、DNA鑑定などなかった時代の本です。そこで、卵性を判断は以下のような項目の類似度で総合的に判断すると書いてあります。
  1.血液型:一卵性なら同じ。二卵性なら違うこともある。
  2.指紋・掌紋
  3.唾液分泌型
  4.耳あか(乾いているか湿っているか)
  5.手指の第2関節の背の生毛(はえているかはえていないか)
  6.眉毛、鼻、口、耳の形、目の形と色
  7.歯の形
つまり見かけが似ているか似ていないかということが、結構使えそうです。
 それから、一卵性双生児を出産することは遺伝とは関係ないが、二卵性双生児の出産は遺伝するようです。母親の親戚にも双子がいれば、二卵性双生児の可能性大ということになります。また一卵性双生児の出産は若い人に多く、二卵性双生児の出産は比較的高齢の人に多いそうです。

2000/5/15 福岡市の杉山奈津子さんからの質問
 はじめまして、私は福岡市中心部の百貨店で働いています。5月8日夕方、案内所のカウンター上にシャチハタの朱インクのような赤い点を発見、よく見るとショウジョウバエのような虫でした。弱っていて動きが鈍かったので、ティッシュに包んで持ち帰りました。1週間放置していたのでちょっと色が悪くなったような気もしますが、相変わらず頭と胴が朱色をしています。コレ、何だと思います?ショウジョウバエって染色体についてお勉強するときに出てきてけど、もしかして色素をつくる遺伝子の異常か何かでしょうか?それとも全く別な虫でしょうか?デジカメもスキャナーもないので写真は添付できません。標本というか、この蝿の死骸を送りつけてもいいですか?その際、何に入れて送ればいいのでしょう?マッチ箱とかでいいのかな。

【松本学芸員の答え】
 
ショウジョウバエは、複眼が真っ赤で割と目立つハエです。一般的に体は黄褐色から黒褐色ですが、お話にも出てくるキイロショウジョウバエは黄赤色です。個体変異もあるでしょうから、かなり赤みの強い個体もいるのかもしれません。
 ショウジョウバエかどうかはものを見ればすぐに分かりますので、もし何者か知りたいという場合には、博物館まで送って下さい。送り方は、密栓できる小さなビンに80%のエタノール(エチルアルコール)をいれて、その中に虫を入れ、ガムテープなどで巻いてから、郵送するのが一番いいです。今回は箱(マッチ箱より頑丈なものがいい)に綿をしいてその上に虫を置き、その上に綿をかぶせてそれを郵送するという方法でもかまいません。ともかく虫を送るときは、虫が壊れないようにすることが大切です。

【茂似太の補足】
 
同定のために昆虫の標本を博物館へ持ち込まれる場合は、こちらの補足をご参照下さい。

2000/5/15 大阪の宇根岡 亨さんからの質問
 普段、口にするナマコは、ナマコ鋼マナマコだと思うのですが、調べていくと、オオイカリナマコ、トゲイカリナマコ、ムラサキクルマナマコ、ニセクロナマコなど色々なナマコが出てきてました。漁業においては、アカ、アオ、クロとよばれたりしているようですが。それが全てマナマコかどうかも今ひとつわかりません。まったく、整理がつきません。
 ナマコの分類について、体系的に載っている文献を教えていただけるとありがたいです。よろしくお願いします。

【山西学芸員の答え】
文献としては、
・中山書店発行の「動物系統分類学 第8巻(中)棘皮動物」内田享監修
 ・保育社発行の「原色検索 日本海岸動物図鑑U」西村三郎編著
 ・恒星社厚生閣発行の「基礎水産生物学」岩井保・林勇夫著
などがあります。

2000/5/14 千葉県船橋市の田口さんからの質問
 カメムシについて教えて下さい。私の実家は秋田で、春・秋には数え切れないほど沢山のカメムシが家の窓につきます。背中が茶色っぽくお腹かが肌色っぽいのもので触ると変な匂いを発します。天気がよく暖かい日に活動が活発になるようで干した布団や洗濯物に潜んでいることも多々あります。夏は死骸くらいしか見当たりませんが越冬できるようで冬は窓のサッシの間や押入れの布団の間などに潜んで冬眠のような感じでじっとしています。私は小さな時から当り前の光景と思っていましたが、先日実家に帰りカメムシの多さに驚き東京では考えられないことだとあらためて思いました。特に何もしなければ何の害もないのですが、大多数の不法侵入は迷惑ですし、精神的にも衛生的にもよくないです。父曰く杉の木から飛んでくるとのことですが、窓を締め切って外出しても次から次へと部屋の中に入りこんでいます。一体どうやって進入するのでしょうか?何を餌に生活しどのように繁殖しているのでしょうか?越冬が可能なのも不思議です。カメムシには天敵がいないようですがカメムシを撃退する方法や対策があれば教えて下さい。

【金沢学芸員の答え】
 背中が茶色っぽいことからはクサギカメムシ、スギの木から飛んでくるとしたらチャバネアオカメムシかもしれないですね。カメムシがそこそこいる環境が正常で、東京近辺のようにカメムシがほとんどいない環境や、秋田のご実家のように大量にいる環境は異常だと思います。
 チャバネアオカメムシと仮定します。チャバネアオカメムシはスギなどの針葉樹をはじめ、多くの広葉樹でたいていは栄養価の高い実を吸汁して幼虫が育ちます。秋に羽化した成虫が暖かい場所をさがして越冬します。それで日当たりの良いところに集まり、洗濯物に付着したり、室内に侵入するわけです。
 天敵は少しはいるかもしれませんが、有効にはたらいていません。それは、周囲の環境が、多種の天敵を多数生存させることができる林ではなく、単一な植林になっているからでしょう。
 撃退の必要性はありますか。スギが発生源だとしたら、スギを減らすことが最も有効だと思います。

2000/5/11 大阪市のMUYUKIさんからの質問
 会社のトイレの壁にとまっていた蛾の名前を知りたいと思います。薄いミントグリーンで一般的な蛾の羽の形(頭を要に4枚の羽が扇上に開いてる、羽は立っていなくてねている)をしています。

【金沢学芸員の答え】
 手がかりが薄いミントグリーンだけでは、約5千種ほど記録されている日本の蛾を同定することはできません。グリーンなハネをもつ蛾はたくさんいます。
 同定するためには、フィルムケースや、薬やインスタントコーヒーの空き瓶に閉じこめて、日本産蛾類図鑑(講談社)などで調べます。ハネの斑紋が似ていても別種ということがありますので、注意が必要です。そのままにしておくと、中で暴れて鱗粉が落ちて、ますます同定できなくなってしまいます。アンモニア水を脱脂綿につけて、中に入れれば、殺すことができますので、それを乾燥させます。そして保存したものを博物館に持ってきていただければ、名前がわかります。

【茂似太の補足】
 
同定のために昆虫の標本を博物館へ持ち込まれる場合は、こちらの補足をご参照下さい。

2000/5/7 栃木県小山市の石向 稔さんからの質問
 キツネナス(Solanum mammosum L.)別名:フォックスフェイス、カナリアナス、トゲナス、ツノナスの栽培方法についてご存知でしょうか?
 キツネナスが食べれるものなのか、観賞用なのか 私にはわかりません。お手数ですが、ご回答願えれば幸いです。

【岡本学芸員の答え】
 キツネナス(Solanum mammosum L.)は熱帯アメリカ原産で、果実の形を楽しむ観賞用植物です。食べると中毒するそうです。
 栽培は一般の食用ナスと同じでよいということです。タネからであれば、2〜3月にフレームや温室で蒔き、4月下旬に30x40cmに1本の割合で定植。窒素肥料や水分が多すぎると、茎や葉ばかりが繁茂して、花は咲いても実が付かないそうです。果実を大量にならせるには、前年の夏に蒔いて育てた株を、フレーム等で越冬させ、翌春に定植するとよいそうです。

2000/5/7 東大阪市の匿名希望さんからの質問
 小学校に勤務する教員です。学校の中に生育する植物の名前を調べていますが、図鑑で調べても名前が解りません。ぜひ、教えていただきたいと思います。


【岡本学芸員の答え】
 お問い合わせの植物は、エウリオプス・デージー(時にはエリオプス・デージーと書いていることもある)と呼ばれて栽培されている植物です。学名はEuryops pectinatusで、南アフリカ原産です。

2000/5/6 三重県大宮町の谷口富久夫さんからの質問
 桜の花が咲いているのを見て、思ったのですが、桜や梅はなぜ葉っぱが出てくる前に花が咲くのですか。桜や梅はバラ科だとおもうのですが、バラのように葉っぱが茂ってから花が咲くのではなく、先に花が咲くのは、何か意味があるのでしょうか。また、なぜ桜や梅などだけがそういうふうになってしまったのでしょうか。

【岡本学芸員の答え】
 ご質問の答えを、温帯の樹木に限って考えてみます。草本を含めると、花をいつ咲かせ、葉をいつ出すか、ということについては、もっと自由度が増すように思われます(ヒガンバナ等の例)。
 温帯の樹木(灌木も含め)では、葉をいつ出すかということは、かなり限定されています。春です。大多数の種がそうなので、多少の遅早はあっても、あまり遅れをとることは許されません。それに、春は穏やかで、弱い新しい葉を展開するには最もふさわしい時期でもあるでしょう。
 花をいつ咲かせるかということについては、どこに花をつけるかという形態学的な制限がありますが、それを除けば基本的に自由、いちばん都合が良いときに咲かせばよいということになります。
 形態学的な問題点として、新しい枝に葉と共に着く花は、葉と一緒に出ざるを得ない、ということがあります。シイやブナ科のコナラ属の花、タブの花などのように花芽が冬までに完成しているものは、展葉とほとんど同時に開花するということになります。多くの場合、花の着いている芽の方が早く開き、葉が開ききらず、葉に邪魔されない時期に開花するのが普通です。クスノキやクリのように、展葉と平行して花を完成して開花するという方式も可能です。この場合は、開ききった葉の上に花を展開するということになります。バラも同じような方式と思われます。
 花芽と葉芽を分離すれば、好きな季節に花を咲かせることができます。梅も桜も、このタイプです。いつを選ぶかということに関して、最も重要なポイントは花粉媒介者との関わりでしょう。梅は、花粉媒介者も少ないけれど競争相手の花も少ない季節に、虫や鳥に気長に花粉媒介してもらう道を選んだものと思います。桜の多くは鳥による花粉媒介が中心になっていると思いますが、葉と花の出る順序は微妙です(ヤマザクラなど)。一応、花が先ということにしておきましょう。何故か? 恐らく、目立つということが重要なのでしょう。桜は旧枝の枝先の芽が葉芽になりますから、それが先に開くと花はかなり隠されてしまいます(特に上や遠くから見たとき)。枝先の芽を葉芽として伸ばすというのは、樹形の問題で、高木種にとってはかなり必然的なことです。

 花をいつ咲かせるかという問題は、花粉媒介者との関係、まわりの植物との関係が中心にあって、その次に自身の葉との関係があると思います。葉は花を隠すものとなる可能性があるので、葉に先駆けて咲くか、葉が開ききってその上に咲くか、のどちらかが多い。これは動物媒花にとっては、目立つか目立たないかの問題ですが、風媒花にとっても深刻な問題で、多くの春先の風媒花は葉が開く前に花粉を飛ばします。葉が花粉の飛散や飛来を遮ってしまうからです。ハンノキなどは冬の間に花粉を飛ばしてしまいます。

2000/5/4 筑波大学の斎藤 猛さんからの質問
 わたしは、大学院の博士課程に所属しています。博物館に非常に興味があり、卒業後できれば学芸員として博物館で働ければと考えております。そこで、博物館の就職についていろいろと情報を集めているのですが、そちらの博物館の就職状況や今後の募集予定、必要資格(専門等)などを教えていただけないでしょうか?

【茂似太の答え】
 現在、当館には16名の学芸員がいますが、まだまだ専門の学芸員のいない分野も多く(そういった分野は専門が近い学芸員が一応担当しています)、充分な活動ができていないのが現状です。学芸員を増やして、学芸員がカバーできる分野を充実させたいと考えているのですが、なかなか思うようには行きません。また、もし仮に学芸員の採用があるとしても、それが決定するのは年末頃のことになります。したがって当面、学芸員の採用の予定はありません。
 当館に限らず、ある程度の規模の自然史系博物館はたいていそうですが、学芸員の募集の際に重視されるのは、求めている分野の研究者としての能力です。学芸員資格は、採用されてから取得すればいいので、まったく問題とされません。どのような分野の学芸員を採用するかが決定するのも、年末頃のことになります。
 学芸員になりたいという質問は多く、質問コーナーの他の回答にも書かれていますが、学芸員の募集は少なく、さらに自分の専門分野が募集されるかどうかは賭に近いと言っていいでしょう。学芸員を目指すよりも、研究者になることを目指して、その選択肢の一つとして博物館の学芸員を考えた方がいいと思います。
 なお学芸員数の少ない小さい博物館(関連)施設では、「生物分野担当」といった大まかな分野での募集もしばしばあります。ただし採用後は一人で生物すべてを担当しなくてはならなくなり、大変ですが…。こういった募集では、たいてい学芸員資格を持っていることが条件になっています。

2000/5/2 羽曳野市のCHONBORINさんからの質問
 最近よく耳にする虫の声について教えて下さい。夜になると、「ジー」っという低い声が聞こえてきます。5歳の娘に言わせると「はるぜみ」ということなんですが、本当は何という虫の声なんでしょうか?よろしくお願いします。

【金沢学芸員の答え】
 
ハルゼミという虫の名前を5歳でご存知とは、すばらしい娘さんですね。ハルゼミは5月頃に松林でよく鳴きますが、鳴くのはほとんど昼間で、夜はめったに鳴きません。
 お尋ねの虫はたぶんクビキリギスでしょう。キリギリスの仲間ですが、他のキリギリスとは異なり、成虫で越冬して、春の4月頃から初夏まで鳴きます。

2000/4/29 住吉区の匿名希望さんからの質問
 熱帯の植生は、熱帯林ですが、一般的に広葉樹が多い。一方、冷帯の植生はタイガ、針葉樹です。なぜ、冷帯には広葉樹はないのか?教えてください。私が担当する生徒からの質問です。

【岡本学芸員の答え】
 
タイガは冷帯(冷温帯)というよりは亜寒帯の植生です。東シベリアのタイガの主役であるカラマツの仲間の落葉針葉樹が生えているのは、永久凍土の発達したところです。夏の間に表面近くの凍土が溶け、そのわずかな水分を利用して生育しているのです。冬は凍結による猛烈な乾燥に襲われます。西シベリアや北アメリカの亜寒帯地域には常緑針葉樹のタイガが発達しています。ここも、土壌は凍結と融解を繰り返しており、樹木の根は表層の浅い部分に張り巡らされています。水条件としてはよい場所ではありません。
 北方の針葉樹林帯でも、川沿いなどの土壌や水分条件のよいところでは、ヤナギやポプラやカンバの仲間などの落葉広葉樹が生育しています。
 針葉樹類は、水分条件のよい環境では生長力が旺盛な落葉広葉樹に負けるため、水分条件の悪い環境(保水性が悪い、あるいは逆に停滞した水につかる等)に入り込み、そこでしぶとく大きく生長して生き延びる道を選んだものと考えられます。水分の蒸散を少なくするためには、小さい針葉は有利です。さらに、針葉樹類には道管がないため、急速な水運搬は不得手ですが、乏しい水を節約して使うのには適しているのかもしれません。

 したがって「なぜ、冷帯には広葉樹はないのか?」という問に直接答えるとしたら次のようになるでしょう。
 タイガの発達している土地は水分環境的に条件が悪い場所であり、広い葉をつけ、活発に光合成する植物(水もたくさん使い蒸散させる)には適していない。もし、針葉樹類というものがなかったら、恐らくそこにも被子植物が進出したと思われますが、その葉は針葉樹類と似たような小型化したものになると思われます。

2000/4/24 和泉市の古林正孝さんからの質問
 また、植物名をおたずねします。田んぼすぐ横の梅の木の下に群生していました。葉は三小葉で、クローバー型ですが、黒いしみのような模様があります。花は黄色、マメ科だとおもいます。白馬岳で見たオヤマノエンドウを黄色にして、縮小したような感じです。
 場所は、和泉市の光明池より南です。田んぼと用水路に挟まれた狭い土地で、梅の木の下でタンポポやオオイヌノフグリ、カラスノエンドウなどとともに生えています。


【藤井学芸員の答え】
 
ご質問いただいた植物は、モンツキウマゴヤシ(Medicago arabica (L.) Huds.)の可能性が高いです。しかし、厳密には果実を見ないと何とも言えません。
 モンツキウマゴヤシは地中海原産の帰化植物で、1954年に三重県で記録されたのが最初のようです。近畿で散発的な報告があります。長田武正著、原色日本帰化植物図鑑に載っています。

2000/4/21 京都府立医大のきしだ つなおさんからの質問
 むかし、北杜夫の「どくとるまんぼう昆虫記」を読んでると「セフェノミア」という時速1308キロでとぶ蝿の一種がいると書いてありますが本当にいるのでしょうか?すこし詳しいことを教えてもらえると助かります。どうかヨロシクお願いします。

【松本学芸員の答え】
 
問題になっているのは、ヒツジバエ科OestridaeのCephenemyiaという属のハエです。Cephenemyia jellisoni Townsendという種が、ニューメキシコで818 miles/h(=1316km/h)で飛行したと“されています”。これはC.H.T.Townsendという1920年頃のハエの研究者による記録らしいですが、詳しい出典は不詳です。
 いろいろな蠅について、飛ぶスピードやそれに伴う体力の消耗の程度や飛行距離等を調べておられる久留米大の上宮先生によると、この仲間のハエは,70-80km/hぐらいの速さで飛ぶそうです。なんぼなんでも、1316kmは速すぎますので、どこかで桁が間違えられたのではないでしょうか。

2000/4/20 東京都中野区のキャロルさんからの質問
 先ほどふと窓見ると、20匹くらい小さな虫が2階のベランダのガラス(部屋の内側)にはり付いていてびっくりしました。飛びますが、動きは鈍く、ティッシュで押さえることが簡単にできます。よく見るとお尻に針がついています。この虫はなんの虫でしょうか?人をさしますか?どこから進入したのでしょう?雨が降っているのも関係がありますか?4ヶ月の赤ちゃんの寝ている部屋なので、心配です。なにか対策はありますか?


【松本学芸員の答え】
 
本当は実物を詳しく見て何者であるかをつきとめなければならないのですが、写真から分かる範囲でお答えします。
 この虫はコバチというハチの仲間で、中でもオナガコバチあるいはカタビロコバチといったグループのものだと思われます。これらのハチの仲間は主に
・他の昆虫にたまごを産みつけて卵から孵った幼虫がその昆虫を食べて育つ寄生性のもの
・植物に虫瘤(こぶ)と呼ばれるものをつくってその内部で植物組織を食べているもの
のどちらかの生活様式をとっています。
 部屋の中に複数頭いたということから、部屋の中で羽化した可能性が高いです。鉢植えとか生け花、あるいはリースなど、部屋の中に何か植物は置いていないでしょうか?もしあればその植物のどこかに不自然にふくらんだ箇所(虫瘤)やその近くに開いた小さな丸い孔はないでしょうか?または部屋のどこかにチョウやガの蛹があればそれから出てきた可能性もあります。
 ともかく、人を刺す(赤ちゃんであっても)ことはまずありませんので、その点はご安心下さい。人にはまったく害のない虫ですのでそのまま外に放り出してしまえば特に対策は必要ないと思います。

2000/4/19 神奈川県のH・Uさんからの質問
 2年前、初めてツバメが家の軒下に巣を作りました。ヒナもかえって、無事巣立ちました。その時の巣が、そのまま軒下に残っています。去年はツバメが訪れたものの、途中でいなくなってしまいました。そして今年もツバメがやってきました。
 以前からあった巣を手直ししている様子を見て心配になったのですが、ツバメが巣立った後、巣は壊してしまった方がいいのでしょうか?それとも、そのまま残しておく方がいいのですか?

【和田学芸員の答え】
 
ツバメにとって、巣が残っていた方がいいかどうかという点について答えます。
 古巣が残っていれば、ツバメはしばしば古巣を補修して再利用します。一から新しく巣をつくるのには1週間程度はかかるのに対して、古巣の補修なら1-2日で済んでしまいます。かかる労力が少なくて済むというだけでなく、その分早く繁殖が始められます。ツバメについてどうかはよく知りませんが、一般的に鳥では早く繁殖を始めた方が繁殖成功率が高いという傾向が知られています。その意味でも、古巣が残っていた方が、ツバメにとってありがたいと考えられます。
 ただし何度も利用されている内に、巣にダニやハジラミなどの外部寄生虫が発生する場合があります。そうなると、繁殖成功率が下がるだけでなく、親鳥の健康にも影響があるでしょう。
 したがって一概には言えないのですが、どちらかと言えばツバメのためには古巣を残しておいた方がいいと思います。

2000/4/14 和泉市の古林正孝さんからの質問
 子どもが家から学校までの途中で見つけた花です。名前を教えてくれとのことで、図鑑でみましたがわかりません。フシグロセンノウに形が似ていたので、そのあたりもさがしてみたのですが…。どこかの庭に植えていた園芸種なのでしょうか、帰化植物なのでしょうか?


【佐久間学芸員の答え】
 
写真を拝見する限りではツルニチニチソウ(キョウチクトウ科)のように見えます。名前の通りつる性で、フェンスや植え込みの間のグランドカバーなどによく使われる園芸種です。原産は南欧から北アフリカだそうです。お手近の図鑑などでご確認下さい。

【岡本学芸員の補足】
 
日本で栽培されているこの仲間には、2種類あります。ツルニチニチソウとヒメツルニチニチソウです。葉の写真がないので断定できませんが、ヒメの方ではないかという気がします。ヒメツルニチニチソウは最近になって多くつくられるようになったもので、載っていない図鑑もあるかもしれません。ツルニチニチソウのように旺盛に繁茂しません。葉の形や花の大きさなどでツルニチニチソウの図鑑の記述とあわなければ、ヒメツルニチニチソウかもしれません。
 ツルニチニチソウ:葉は卵形
 ヒメツルニチニチソウ:葉は楕円形でツルニチニチソウに比べて小さい

2000/4/12 長野県のKUPさんからの質問
 私の家は築30年のコンクリート住宅(パルコン)です(一軒家です)。3年程前から、お風呂場にナメクジ、ミミズ、ヒル、ムカデが出現するようになりました。この虫達は一体どこからお風呂場に出現するのでしょうか。
 お風呂場には、小窓がありますが網戸にして開けるようにしています。また、壁や床にも目立つひび割れなども特にありません。虫が入ってこれる場所と言えば、排水溝だけなのですがこんな所から虫は出て来るものなのでしょうか。

【山西学芸員の答え】
 
ナメクジは、やはり排水溝の可能性が高いように思います。よく這いのぼってきます。ヒルと書かれているのは、家の周りの湿ったところに住むコウガイビルという動物ではないでしょうか?これもナメクジと同じような経路でしょう。ムカデは、窓などにちょっとしたすきまがあるのかもしれません。土の中にすむミミズについては、ちょっとわかりません。

2000/4/7 和泉市の古林正孝さんからの質問
 4月1日の朝、起きたら右足のすねが痛くなっていました。昼すぎから熱(38.5℃)も出ました。翌日、一日中寝ていたのですが、足がどんどん痛くなり、赤くなってパンパンに腫れてきました。夜、病院に行くと、ばい菌によるか、虫にやられたというのです。足のすねのある一点を中心に腫れが広がっています。だから、その箇所の傷からの化膿か、虫に刺されたか、というのですが、原因は不明です。
 4月とはいってもまだまだ肌寒いので、虫はどうかな?とも言われました。今頃の時期、このような症状をもたらせるような毒虫はいるのでしょうか?

【松本学芸員の答え】
 まずムカデの可能性が考えられます。この時期でもムカデは、石をひっくり返したり、積もった枯葉をめくってみたりすれば見つかり、暖かい日なら結構活発です。家の中にも入ってくることがありますので、寝ているあいだに咬まれた可能性もあります。
 この時期になるとミツバチなどのハチも出てきていますが、刺された時に分からなかったようですので、可能性は低いでしょう。
他にこのような症状の原因となる生き物はあまり思いつきませんが、吸血性の昆虫,例えばブユなども、体質によっては熱や痛みを伴うことがあるようです(通常はしつこい痒みが続く)。

2000/4/6 宮崎県の山内真由美さんからの質問
 最近、夜草むらから「ジー」っと言う虫の鳴き声がするんです。あれはどういった虫が鳴いているんですか。友人は、「毛虫が鳴いているんだ。」と言っていました。

【金沢学芸員の答え】
 春〜初夏にかけて鳴く虫が、よくミミズの鳴き声と間違われることがあります。そのミミズのイメージから、お友達は毛虫と勘違いされたのでしょう。毛虫というのは、蛾・蝶・ハチ・ハエなどの幼虫の中で、体毛の長いものの総称で、それらはほとんど鳴きません。
 よくケラの鳴き声が、ミミズの鳴き声と間違われることがあります。ケラは直翅類(バッタ、キリギリス、コオロギなどの仲間)で、穴の中で鳴くようで、どちらかというと「ボー」というような声が多く、ジーは少ないようです。
 春〜初夏にジーと鳴く虫の代表はクビキリギス(ジイーンと強い連続音)で、成虫で越冬して7月頃まで鳴きます。他に同じく成虫で越冬するシブイロカヤキリモドキ(ジャーと大きな連続音)も春先から鳴き始めます。6月になると、卵で越冬したヤチスズ(ジィーと低温で長くひく)などが鳴き始め、種類が増えます。
 今頃の季節のジーという鳴き声は、クビキリギス(キリギリスの仲間)の可能性が最も高いと思います。

2000/4/2 兵庫県のカリンさんからの質問
 今年の3月初めぐらいからなのですが、日没から日の 出まで、家の回りを何かが鳴きながら飛び回っています。
 初めはいったいなんていう鳥だろうと思い調べて見ました。しかし、それらしき鳥が見つかりません。春の渡りで夜に鳥達が鳴きながら移動でもしているのかと思っていましたが、どうも鳥ではないような気がしてきました。
 ひょっとしてコウモリ?確かに家の猫がよくアブラコウモリ?(図鑑の写真を見る限り)をくわえて来たり雨戸の戸袋からコウモリが出てくることはありました。でもコウモリの声って人に聞こえるのかな?
 今も窓の外からピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ともフィ、フィ、フィ、フィ、とも取れるような声で鳴きながら辺りを移動しています。今までも毎年鳴いていたのかも知れませんが、この時期はたいていフクロウの声が聞こえていたので気づかなかったのかも知れません。今年はフクロウが近くで鳴かないので気づいたのかもしれません。
 周囲の環境は、兵庫県の山を切り開いてでき た住宅街で、家から5分ぐらいで標高200-300mぐらいの山に入れます。山にはゴルフ場があります。近くに田んぼや川はなく、よく鳴き声が聞こえるのは目の前にある学校のグランド上空です。
 建物に反響して結構大きな声に聞こえ、近くに人が通れば間違いなく誰でも気づ きます。いったい何でしょうか?

【和田学芸員の答え】
 夜飛ぶ鳥にはいろいろありますが、ヨタカやフクロウ類をはじめこのような声を出して一晩中飛び回る鳥はいないと思います。
 というわけで、コウモリの一種ではないかと調べてみました。コウモリ通信(Vol.3 No.1, Vol.4 No.1, Vol.7 No.1)によると、日本産ではっきりと誰の耳にも聞こえるエコーロケーション音を出すコウモリとしては、オヒキコウモリの可能性が高いようです。とは言っても必ずしもオヒキコウモリと確認されたわけではなく、またオヒキコウモリの生息状況は謎に包まれているため、まだまだ調べる必要があるとされています。
 その他、ヤマコウモリやヒナコウモリ、クビワコウモリなどもかろうじて人の耳にも聞こえるエコーロケーション音を出すそうです。ただし、巣穴の近くや、ディスプレイの時に出すsocial callには、けっこういろんなコウモリが、可聴音を出すと言います。
 今回お尋ねの声の主もオヒキコウモリの可能性があると思います。もしオヒキコウモリなら貴重な記録です。オヒキコウモリは、アブラコウモリの倍近くある大きなコウモリです。声がする辺りを強力ライトで照らせば、姿を確認できると思います。ぜひ一度確認して下さい。もし大きなコウモリであったら、お知らせ下さい。

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