第3展示室 > 種のたん生

地球上の生物は、ただひとつの、共通の祖先にさかのぼることができると言われている。私たちをとりまく複雑な生物界は、最初の生命が、長い時間をかけて、多くの種に分かれながらより高度な体制をもった生物に進化することによってできたものである。
そして、新しい種は今も生まれている。私たちは琵琶湖においてその実例をみることができる。


◆琵琶湖で進化した魚たち

琵琶湖は日本でもっとも広い湖であり、さまざまな環境を豊かに保っている。またもっとも古い歴史をもち、湖としての存在は約400万年前までさかのぼることができる。
ここにすむ淡水生物も、日本の湖のなかではもっとも種類が多い。魚や貝や水草だけでなく、プランクトンや藻類まで数えると1000種以上になる。このうちに、特産種が多く含まれている。
琵琶湖の淡水魚は、日本産の半数の50種以上がすむ。日本全国に広く分布する魚、西日本にだけいる魚のほかに、この湖や淀川にだけ限られた特産種も多い。特産の淡水魚には、ふたつの性質のものが含まれていると考えられる。
1)かつては広い地域に分布していたと想像されるが、いまではここだけに残っているもの(ハスやワタカなど)。
2)琵琶湖で新しい生活様式を獲得して、新しい種になったもの。(ゲンゴロウブナ・ホンモロコ・アブラヒガイ・ビワコオオナマズなど)。
琵琶湖大橋より北の北湖には、深くて広々とした沖合が広がり、岸辺から湖底へと礫や岩の急斜面がつづく場所がある。広い沖合と岩場の斜面は上に述べた2)の魚達の新しい発展の舞台となってきた。ここで新しい種が生まれ、、また生まれつつある。

◆3種のフナ

琵琶湖には3種のフナがすみ、それぞれの生活場所や餌を違えている。このうちギンブナ(ヒワラ)は浅い岸辺にいて、水底の藻類を主にした雑食性。日本に広くすむものと同じである。
特産のゲンゴロウブナ(マブナ)は、広々とした沖合の表層で群れをつくり、プランクトン(単細胞の藻類など)を食べている。植物食のため腸が長く、プランクトンをこしとるための鰓耙(エラの付属物でフィルターの役目をする)がよく発達する。ニゴロブナ(イオ)も特産のフナである。沖合の湖底にすみ、雑食性で腸も太くて短い。
これら2種のフナは、ギンブナとは別の系統の魚とされ、キンブナ系統のものから、琵琶湖の沖合の環境と結びついて進化してきたものと考えられている。
養殖されているカワチブナ(ヘラブナ)は、ゲンゴロウブナを改良した品種である。